03
何を言っても決定権のない私は高志に従うしかなく、嫌々車に乗り込んだ。
街灯のある道路から一本外れると、とたんに暗くなる。それでもまだポツンポツンと街灯はあり、民家も立ち並んでいた。けれどそのうち民家もなくなり街灯もなくなり、そして次第に道が狭くなった。
山へ入ったのだ。
明かりのない真っ暗な山道を、ものすごいスピードで走る。
カーブに差し掛かるとヘッドライトの光を受けた反射版がキラキラして、ようやくそこがカーブだと認識した。
「ねえ、スピード落として。危ないよ。」
「大丈夫だって!俺のドラテク見せてやるよ。」
得意気に言うが、ドラテクとか正直どうでもいい。道幅は狭いし、対向車がトラックだとセンターラインをはみ出すくらいなのだから、すれ違う度にその距離感の近さにヒヤッとする。
「ねえ、カーブとか対向車とか、ちゃんと見えてる?」
「はあ?お前俺を信用してねぇの?」
「信用とかじゃなくて、事故したらどうするのよ?」
「バーカ、ビビってんじゃねえよ。」
心配する私をよそに、高志はドヤ顔で運転を続ける。
「ひゃっ!」
「ヒャッホー!」
目の前にガードレールが迫り、思わず悲鳴が漏れた。メーターをチラ見すると100キロを超えている。100キロで急カーブを曲がるとか、一気に寿命が縮む思いだ。
ドン引きする私。
楽しそうな高志。
私たちの温度差は天と地ほどになった。
とにかくもう、語彙がなくなるほどにヤバかった。
高志への不信感と怒りは募るばかりで、早く車を降りたい、家に帰りたいとばかり考える。そうこうしているうちに少し開けた場所に出て、ようやく車が止まった。
私は深いため息をつきながら、まわりを見渡す。
他にも何台か車が止まっていて、人もまばらにいるようだ。
そこは、小さな展望台のようだった。
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