第4話 そんなことはしない

「さぁて!今日は素振りでいいか!」


勢いよく外に出ていったと思えば、こっそり家の裏の倉庫に隠してあるちょうどいい長さの木の棒をもって上下素振りを始める海斗であった。


棒を振り下ろす動作と一緒に息を吐くようにしながら何度も何度も上段にい振り上げて股下までえ振り下ろす。この動作をずっと繰り返しているわけなんだけど、素振りっていいよねやってるうちに無心になれるというか。いや、実際は動きにブレがなくなるようにいろいろ考えてやってるんだけどさ。どこぞの達人みたいにはできないよ。


「フッフッ!」


え?はどうしたって?そんなのお父さんがやってくれるよ!だって僕は今3歳だからね!体も未発達で大したことができないんだよ…

いや、いろいろ試してみたよ?

ぬぅぅううんとか、はぁぁぁあああ!とか念じてみたけどさ。大したことはできなかったんだよね。


「フッフッ!」

「あ、カイト!おーい!」


できたことっていえば、両手を突き出してはぁ!ってやってみたらボスッってなんか出たくらいでさ。あぁでもその時なんか外でマリア姉ちゃんが「きゃぁあああ!」って叫び声上げてたんだよね。あれなんだったのかなぁ。今でもよくわかんない。なんか僕が魔力的何か?氣ってやつでもいいんだろうけど、とにかくそういう感じの練習してるときに大体いっつもマリア姉ちゃんは「きゃぁあああ!」とか「いやぁあああ!」とか叫び声が多くてさ、ほんとこっちの集中乱されまくりだったよね。ここ最近は教会に通ってるおかげで集中できるしね。


「フッフッ!」

「ねぇねぇ、カイトってば!おーい!何してるのさ!今日も遊ぼうよ!」


碌に体が動かせなかった頃はチャクラ的な何かを感じようと思って精神修養っぽいことばっかしてたかな。成果としては確かに体の中に何かを感じることはできるってところ。ただ思うに前の世界でいうところの氣ってやつははっきり感じるんだけどね、もう1つ何かあるように感じるんだ。そっちの方はボヤっとしてていまいちつかめないんだけど。


「カーイートー!ねぇねぇねぇってば!」

「フッフッ!」


え?なんで氣はわかるのかって?まぁ一応武道をやっていたからね。全国大会とかに行けるような立派なレベルではなかったけど、というか部活はやってなかったし、先生からはいろいろ教わってはいたからね。稽古をつけてもらったり、自主練したりしていくうちになんとなくは感じ取れるようにはなっていたと思うんだ。木刀とかの長さを感じたり、自分の手先足先を感じ取ってより正確な動きに努めたりね。まぁ、先生に言わせればまだまだだったと思うけど。


「リリねぇーーー!カイトが構ってくれないよーー!!カーーーイーーートーーー!!!」

「フッフッ!」


だからこの世界に来てもこれだこれ!って感じで氣は感じ取れてたと思うんだよね。ただ外側にぶっ放す!みたいなことができないんだよ。あの名作ドラグーンコインのきめはめ波!って異世界に来たしできるかなぁって思ったけどできなかったんだ。でも僕はまだあきらめてない!きっとまだ操氣がなっていなんだと思う!まだまだ修行中の身さ!


「落ち着きなさいってセトラム。夢中で棒振ってるんでしょ。そのうち気付くってば。」

「でもぉ!今すぐ遊びたいよぉ!」

「フッフッ!」


…えぇ、分かっていますとも。

素振りしたかったから無視していただけさ。ああああ!わかったよ!


「フッ!はぁ…なんだよセトラムぅ。今修行中なんだよ。見ればわかるだろ?」

「あぁ!わざと無視してたんだなぁ!ひどいじゃないかっ!」

「今始めたばっかだったのにさ、急に横やり入れられたら嫌になるだろ?」

「横やりって何さ!槍は前に突くものだろ?」

「おいおい、セトラムぅ。わかってないなぁ。槍ってのはだな、突くだけじゃないんだぜ?」

「へぇ、そうなの?カイト?」

「そうさ!例えばこう突く!ってだけじゃなくてだな。横に振れば薙ぎになるし縦に振り下ろしたっていいんだ。それに投げることだってできるんだぞ?」

「そうなんだぁ!さすがカイト!物知りだね!!」

「はっはっは!そうだろうそうだろう!」

「あんたたちけんかしてたんじゃないの…」


仲が良ければ何でもよかろう!!



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