第1話 運命の歯車
俺は、鴻悠真。大学3年の医大生だ。
外科を主に勉強していて、将来困っている人々を助ける仕事がしたいと考えている。
けど、人助けと言っても種類は様々。「これになりたい」といった明確な夢
はまだない。
先輩や大学の先生には「やりたいこと・なりたいものは早く見つけて、準備を少しでも早めに始めていった方がいい。」とよく言われてるし、就職活動の話題も最近よく聞くようになってきた。分かってはいるけれど、どうしてもピンとくるものがない。
大学受験の時も、特別将来の夢が決まってるから医大行こう。と決めたわけではなく、ただ医療の知識と医大を卒業したという証明があれば、何かといろんな場面で役立つかもしれないと考えたからである。
受験勉強は大変だったけど勉強は嫌いではなかったし、勉強する程知らなかった知識が身についていくあの優越感と達成感の感覚が結構好きだった。
そして、お昼休みの時友人の加藤と食堂でランチを食べているとき
「なぁなぁ、知ってるか悠真?最近よくニュースとかで話題になってる{まっくろくろすけ}のこと。」
「まっくろくろすけ?なんだそれジブ〇か。お前随分メルヘン思考な頭になったな。赤点補習の勉強のし過ぎと疲労で、現実との区別までつかなくなっちまったか?」
「ちっげーし!!最近、日本の各地で頻繁に出てるって言われてて、目撃情報も何件かあるんだってよ。」
「じゃあ、彼女と最近別れたからか?」
「傷をえぐりつつ、話を逸らすんじゃねぇ!」と半泣きになる加藤。
ハイハイソウデスカー。ゴメンネー。と適当に返事すると「信じてねぇだろお前!くそっ、ムカつくなあ!」と、とうとうキレられる。
「とにかく。その{まっくろくろすけ}は生きてる人間から死んだ人間にまでとり憑いて、バケモノになる。暴れまくって目的を果たしたら、力尽きて黒い霧みたいになって消滅するんだと。」
「はぁ…………………………。」
こんなことを信じろと言われても、半信半疑になる俺の反応は普通だ。
別にオカルト話が嫌いという訳ではない。妖怪とか幽霊がいるなら、ぜひ一度会って話してみたいと思うくらいの子供心のような好奇心はある。
「まあ万が一、その{まっくろくろすけ}に会ったら気を付けろよ~。
まぁ俺も完全に信じちゃいねえけどな。」
言い出しっぺのお前が信じなくてどうする。とツッコミたくなったが、心の中に留める。
昼食を食べ終わったあと、それぞれの授業場所に向かうため食堂前で解散した。
「次の授業は、っと…………………………………………。あっ!!ヤバッ!!!次、心療内科の研修授業だ!」
授業に遅刻になりそうになって急いで向かった。
この時の俺はまだ{あれ}の本当の恐ろしさを知る由もしなかった。
そしてこの時から俺の運命の歯車とやらが動き始めてることに、脅威がすぐ後ろに迫っていることに、まだ俺は気づいていない。
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