34 ジーン
爆発が起こり、扉と、すぐ目の前にいた人間を吹き飛ばした。
煙が立ち込める中、ようやく疑問が生まれる。
――俺は今、何をした?
魔力をためていた。無意識だろう。感情が高ぶると魔力の制御が利かなくなる、というのはよく言われていることだった。
そして、その魔力をぶつけた。
誰に――?
いや、まて。冗談だろう。だって、知っているはずだ。俺の魔法がどうしようもない偽物だと。騙せていなければ発動もしない。爆発なんて起こるはずもない。
……違う。おかしいのはそこじゃない。どうして俺は魔力を練ることができた?
俺は魔力なんて持っていない。魔法を使えると相手に思い込ませた時だけ、その現象を引き起こすことができる。相手の認識あっての魔法なんだ。だから、おかしい。魔力を練って、こんな魔法を使えるなんて、
――ありえない。
わかっている。頭の中では、たった一つ残っている可能性がある。でも、それを信じるにはあまりにも、あまりにも、俺にとって都合がよすぎる。俺にとって、優しすぎる。
そんな可能性を、俺が、信じられる訳ないだろう……!
「……あ、はは」
硝煙の中から声が聞こえ、ハッとする。
「っ!」
爆発の中心へと駆け寄り、そこに横たわる人影を抱え起こす。
「あちゃあ……、死んでなかったかぁ」
すすだらけの顔で力なく笑うのは、まぎれもなくアイーダだった。
「……なんで……! どうして……!」
いったい、何に対して言ったのか。自分でもよくわかっていなかった。
それでも、彼女が言った言葉は、俺の疑問や迷い、その全てに、一つの答えをくれた。
「信じてたから」
その言葉を聞いて、ようやく気付いた。
自分が、泣いていることに。
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