❻PCR検査・抗体検査

 「PCR検査を受けさせてくれ!」

 「国民全員が受けるべきだ!」


 と騒いでいる人がとても多い日本ですが、結論から言いますと「PCR検査は確定診断のみでいい」となります。


 なぜなら「精度が低いから」です。

 PCR検査で、感染者がきちんと陽性だと判定される確率のことを「感度」と言いますが、これはだいたい60-70%です。


 100%ではないのです。

 30%以上の人が、本当は陽性なのに陰性だと判定(=偽陰性)されてしまいます。

 つまり100人の陽性患者がいたとして、60-70人は正しく陽性判定が出ますが、残りの30-40人は陽性であるにもかかわらず陰性と判定されるため、意気揚々と帰宅して遊びまくり、感染を広げてしまうでしょう。


 また、PCR検査できちんと陰性だと判定される確率のことを「特異度」と言います。

 これは99.数%と、かなり高い確率で判定されます。


 が、たとえば特異度99.9%として1000万人が検査を受けたとした場合、1万人が陰性であるにもかかわらず陽性だと判定(=偽陽性)されてしまい、ただでさえ少ない病院のベッドをさらに圧迫してしまう可能性があります。


 「何でもっと精度の高い検査をしないんだ!」と、怒り出したくなる気持ちも分かりますが、残念ながらこれが最も精度の高い検査なのです。


 PCR検査のことを詳しく述べましょう。

 PCR検査は「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」を利用した検査方法で、30年以上前から使われています。


 イメージとしては、培養液を入れたシャーレに、見えない程度の少量のカビ菌を入れたと考えましょう。

 しばらくすると、みるみるカビが増えて、見た目にもはっきりとカビが分かります。

 こういう検査です。


 やり方としてはまず、綿棒で喉や鼻の粘膜を採取します。

 それにポリメラーゼという酵素を加えると、コロナウイルスのDNAの遺伝子のみが増幅されます。

 大量に増幅されて見やすくなったところで写真を撮り、コロナがいれば陽性、いなければ陰性と判定します。

 陽性と判定された場合は、コロナが確認されていますので、ほぼ間違いなく感染していると考えて良いでしょう。

 したがって「確定診断」としてなら、かなり信頼のおける検査と言えます。

 このウイルスは風邪のウイルスであり、ベテランの医者が診ても、ただの風邪なのか新型肺炎なのかの見極めがかなり難しいのです。


 ただ、粘膜をぬぐった場所にコロナウイルスがいなかったりする場合があります。

 またこのコロナウイルスは、新型肺炎と言う名の通り、喉や鼻を通り越して直接肺に入っている場合もあり、そうなると何度検査しても陰性と判定されてしまいます。

 これが感度60-70%である理由です。


 陰性が陽性と判定されることは非常に稀なので、特異度は99%を超えます。

 100%にならないのは、いわゆる検査の「誤差」というもので、たとえば綿棒でぬぐっている最中にたまたま空気中のコロナウイルスがくっついたとか、スタッフがミスをして他の検体と混ぜてしまった、などがあるようです。


 今の日本の保健所のように、あまりも過酷な労働状況であれば、そういうミスも多く起こるでしょう。

 実際、医療機関より保健所の方が崩壊しかけているのです。

 そういう点からも、国民全員がPCR検査をするべきだ、などというのは危険なことだと言えます。



 抗体検査と言うのは、体の中に「対コロナの抗体」が出来ているかどうかを血液検査するものです。


 一度ウイルスに感染すると、次回の感染に備えて体の中に抗体ができます。

 それが出来ているかどうかを確認する検査ですが、残念ながら精度はPCR検査より低く、6割程度に留まっています。


 理由としては、他の風邪ウイルスとの見分けがつきにくいことがあげられます。

 また、抗体ができるまで1週間程度かかるため、その間に検査しても空振りに終わってしまいます。


 「抗体ができていれば、コロナに対して無敵になれるじゃないか!」と言う人がいますが、残念ながらそうはいきません。

 一度罹患した人が、また罹患し、しかもより重症化しやすくなったという報告があります。


 また現在、新型コロナウイルスは世界で17種類程度に変異しているため、他の種類のコロナに同じ抗体が通用するとは限らないのです。

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