03.大地震

 俺がいつものようにその日の分の仕事を終わらせ仮眠室で寝ているとき、それは起こった。

 地面が揺れたと思ったら、とてつもない衝撃に見舞われその場から動けなくなった。ドドドドドドドッ、と轟音が響き渡る。その中からかすかに悲鳴が聞こえたような気がしたが、それはすぐに振動音にかき消されてしまった。

 地震か、久しぶりだな、とガクガク揺らされながら当時の俺は他人事のように思ったものだ。実際数年間この辺りで地震なんてなかったし、震度4や5くらいの地震ならば、強力な耐震構造を取り入れているここ新海ステーションでは軽くゆらっとする程度でそこまで被害が大きくなることもないので、そう思うのも無理はなかったのだが。

 しかし、俺は気付くべきだったのだ。そこまでの耐震性能をもつ深海ステーションでさえ、ここまでの衝撃に見舞われている地震の規模に。


 10分後、揺れが収まって立ち上がった俺は周りが大騒ぎになっていることにようやく気付いた。すぐ隣の部屋にいた同僚の元へ行き話しかけた。

「いや、なかなかすごかったな」

「え、なんでそんなに落ち着いてんの⁉ 今とんでもない事になってるよ!」

「いや、そんなに慌てることはないだろ? どうしたんだよ」

 俺は同僚の慌てっぷりに心底驚いた。同僚はスマホをものすごい勢いで操作しながら言った。

「ほら見て! 耐震制震構造を重ねに重ねたここですら震度7を計測してるんだよ! 研究室とかもうぐっちゃぐちゃ! けが人も大勢いるんだよ⁉」

「……え?」

 と、地震の最中も同僚に話しかける直前ですら寝ぼけていた俺はその事実を知ってしばらく動けなかった。

 ―――ここですら震度7なら、地上はいったいどんなことになっているのだろう?


 伊豆・小笠原海溝のすぐ横で。フィリピン海水深5000mの海底で考えた。

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