第7話 能力
「能力ってのは…?」
この今にも死にそうな身体で生きていられるのだから
何かしら超常的な力が作用している事は想像していたが
改めて能力と言われると正直ワクワクしてしまう。
「転生者とは総じて特殊な能力を発現して活動を再開します。」
「その能力の内容は生前の生活に密着している事が分かっています。」
「生前の特技とかか?」
そう聞きながら自分の特技を思い返す。
無い。
思い当たる特技が全く無い。
軽くショックを受けているが平然を装ってリナの説明を聞いていく。
「特技もそうですね。それ以外のポジティブな要素なら仕事や趣味嗜好等も影響します。」
「またネガティブな要素もあります。例えば心的外傷や嫉妬等も能力に影響を与えます。」
「なるほど…。能力の発現は複雑な要素が絡み合った結果なんだな。」
それなら俺にも何かあるかも知れないと思いめぐらすが
やはり特に思い当たるものは無い。
「吾妻さんに関しては意図的に能力の行使を未だしたことが無いので不明な点が多いです。」
「ですが確実な点として吾妻さんの能力が電気に由来するものと断言できます。」
「電気…だと?」
「はい。ただ前世との繋がりが無いので電気に関係するとの表現に留まりますが…。」
「何か怒ってます?」
俺の肩が俺の意思を無視してワナワナと震える。
それは俺自身で止めること敵わず。
だか自らも止める気が無い。
むしろ震え上がれと切望する。
そんな思いを押し殺しながら俺はリナに問い掛ける。
「ぐっ…具体的にはどこまで分かっているんだ?」
「能力としての程度は分かりませんが不随意的に発電、放電、電流を操っていると思われます。」
「ふずいい?」
リナもよく難しい言葉を使う。学者ゆえなのだろうが。
「無意識に電気を作って放ってる感じです。」
最初からそう言って欲しい。
「後、電流はそのままの意味になります。電気の流れをある程度操作していると思われます。」
なるほど。だいたいは理解した。
だが俺が聞きたいのはそんな事ではないのだ。
男性諸君なら分かってくれるだろう。
俺の聞きたいことは。
「雷は…撃てるのか?」
そう。これだけである。
これだけ聞けたら俺は充実して休息に入れる。
「雷ですか…。現状では可もなく不可もなくですかね。」
「撃てるかもしれないんだな?」
俺は食い付く様にリナに問う。
「ええ…。まあ…。」
リナは俺の突然の食い付きに戸惑っている様だがそんな事はどうでも良い。
「来た…。」
「えっ?何がですか?」
「来たあぁー!!」
俺は歓声と共に拳を上に掲げる。
特殊能力が雷とか完全に勝ち組ではないか。
この瞬間俺は特別な何者かに成れたのだ。
「吾妻…さん?」
リナが俺を呼んでいる気がするがそれどころではない。
雷を使えた時の為に必殺技と技名を考えなくてはならないのだから。
「そうだ!能力の訓練を今からやろう!」
俺はこの歓喜を抑えられずリナに訓練の継続を打診する。
「ええ。まあ…私は別に構いませんが…。」
リナは完全に呆気にとられているが知った事ではない。
今すぐに俺の全力を「雷神降臨(トール・アドヴェント)」を発動させねば!
そして俺は能力行使の特訓へと身を投じた。
強い夢と希望をもって。
そして5時間程が過ぎた所でリナが結論を出す。
「やっぱり雷は無理ですね。」
帰る。
訓練は終わりだ。
もう何もしたくない。
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