第3話 転生兎と変態王女

【異世界アニマ フィア・グランツ王国 ステラの部屋】


「妙な魔物が暴れてる?」


 爺やの淹れてくれたお茶を飲みながら、ステラが事情を話し始めた。


「ああ、最近、世界各地で見慣れない巨大な魔物が暴れているらしい。この国にも現れた」


 巨大な、魔物…


「ただ暴れるだけでも厄介なのだが、その魔物を見た者が受けた印象が、どうも噛み合わないんだ」


「受けた印象?」


「ああ。そこが『妙』であり、一番『厄介』なんだ…」


「どういうこと?」


「今、この世界は人と魔物が共存を始めて久しいが、未だにお互いの存在を認めようとしない種族は少なくない。かつて、勇者が人と魔物の架け橋となり、世界を平和に導いたというのに、嘆かわしい限りだが」


「勇者が人と魔物の間を取り持って、和解させたの?」


「ん?ユキトは勇者と魔王の伝説を知らないのか。まあ、もう400年以上前の話だからな。だが、そちらの話をするとさすがに脱線してしまう。また後でいいか?」


「うん、大丈夫」


「すまないな。とにかく、人と魔物の関係は基本的には良好だ。この国にも多様な種類の人や魔物が暮らしている。だが、例の魔物が現れた影響で、両者の関係に亀裂が入り始めた」


「『妙』な『印象』?」


「そうだ。『例の魔物』を見た『人』は、『それ』を『巨大な魔物』と表現した。だが、『魔物』たちは『それ』から、『人の気配』がすると言ったのだ」


「え?『巨大な魔物』から、『人の気配』?」


「ああ。だから、人からすると、魔物たちが人に危害を加えているように見え、魔物からすると、人が魔物に似せたなにかで、魔物を陥れようとしているふうに見えるらしい…」


 なんだそれ…そんなのまるで…


「存在そのものが、人と魔物の関係を壊そうとしてるような…?」


「ああ…そう見えるな…」


 うーん、なんだか大変なことになってるみたいだなぁ…



 それにしても、『この服』着替えづらいな…


「大丈夫か?ユキト?やはり手伝おうか!?」


「大丈夫。続けて」


 俺は今、ステラと同じテーブルで爺やのお茶を飲んでいる、のではなく、部屋の隅っこの仕切りの向こうで、別の服に着替えながら話を聴いていた。それというのも 話を始める前…



【数分前】



「よし、では始めようか」


「その前に」


「ん?どうした?ユキト?」


「俺を降ろしてもらえませんか?」


 お茶の準備が終わると、ステラは当然そうするべきであるかのように、俺を膝の上に乗せて椅子に腰かけた。


「ん?なぜ?」


「キョトンとしないで?さっきから距離の縮めかたが、えげつないんですよ。もうちょっと自重して?」


「えー」


 ステラのアゴがグリグリと頭に当たる。


「単純に甘えてこないで?せめて少しは言い訳とかして?」


「お嬢様…」


 爺やも見兼ねてこちらに近づく。


「分かった。ただし、条件がある」


「ええ…ただ膝から降ろしてもらうために、なにかしなきゃいけないの…?」


「あの仕切りの向こうにユキトの服が用意してある。ぜひ、それに着替えてほしいのだ!」



【現在】



 と、いうわけで俺は今、部屋の隅っこの仕切りの向こうで、別の服に着替えながら話を聴いているのだ。


「手伝ってほしい時はいつでも言ってくれ!」


 仕切りの向こうから、ガタッ!と、椅子から立ち上がる音が聞こえる。座れ。


「大丈夫。続けて」


「ふむ…とにかく、正体は分からないが、例の魔物のせいで我が国の民も、一見、関係は良好だが、内心、疑心暗鬼になっている。だから私は民を安心させるため………魔物と結婚することにした!」


「は?」


 ガタッ!と、また立ち上がる音が聞こえた。いや、だから座れ。ていうか、なに?どういうこと?何でそうなるの?


「具体的にはウサギの獣人!つまり君だユキト!」


「いや、なんで!?なんで俺とステラが結婚すると民が安心するの!?」


「例の魔物の脅威はすぐになんとかできる見通しはたたない。だからせめて王女である私が、積極的に魔物と友好を結べば、少しは民たちの疑心暗鬼も和らぐと思わないか!?」


「うーん………?」


 そ、そうかな?ちょっと強引すぎない?


「あと、ウサギってめちゃくちゃ可愛いだろ!?」


「大義名分に私利私欲を無理矢理ねじこんでない?」


「そんなことは無いさ!かつて勇者もウサギの相棒と共に、魔王と戦った伝説がこの国には残されている!勇者の末裔である私が!ウサギであるユキトとカップルになるっ!この運命的な組み合わせに!熱くならない民など!この国にはいない!」


「民に対する期待が重すぎる…」


「お嬢様…」


 ほら、爺やもちょっと引いてるじゃん。


「ていうか、勇者の末裔?」


「ああ!なにを隠そう、この国の初代国王は、勇者アルクス・フィア・グランツだからな!我がフィア・グランツ王国は勇者が建国したのだ!」


 なるほど。人と魔物を取り持った勇者が作った国で、その末裔であるステラが、かつての勇者とウサギの関係をなぞらえて、ウサギの獣人である俺と結婚することで、民の疑心暗鬼を払拭すると。


「うーん、やりたいことは分かるんだけど、やっぱりちょっと無理があるような…」


「私もそう申し上げたのですが、メイドや騎士たちの制止も振り切り、一人森の中へ…」


「結婚相手、探すために森の中にいたの!?」


「例の魔物の手がかりも探していたがな。素敵なウサギもついでに探していた。2:8の割合で」


「いや、それウサギ探しがメインじゃん」


「そうしたらユキトの悲鳴が聞こえたんだ。いやー、よかったな!私が、大義名分に私利私欲を無理矢理ねじこむ変態で!」


「ついに自分で認めちゃったよ!」


「お嬢様…」


 ああ、爺や泣きそうだよ?そりゃ小さいころから面倒見てた王女様が、高らかに変態宣言したら泣きたくもなるよ。


「もう…ステラ、もうちょっと爺やに優しくしてあげて?」


 そう言いながら、着替え終った俺は仕切りの向こうに歩きだした。


「お、おおお!ユキト!可愛い!めちゃくちゃ似合ってるぞ!」


「そりゃどうも…」


 今の俺の姿は、そう、一言で言えば、ステラだった。

 おそろい。ミニチュア。ステラが着ている服をそのまま小さくしたようなデザイン。もちろん、スカートだ…


 人からウサギに転生して、前世でもしたことの無い女装を、ほぼ初対面の人たちに披露する。状況がカオスすぎるっ!


「ふふふ、やはり私の目に狂いはなかった!ユキトはなにを着せても似合うな!」


「頭は狂ってるけどね…」


 あははは!と、はしゃぎながら俺を掲げ、くるくると回転するステラ。下に降ろせ…


 すると突然、ステラは俺を下に降ろした瞬間、スカートをめくった。


「っ……!!!」


「あれ?ユキト、パンツは穿いてくれなかったのか?」


 こいつ………!


「は…穿くわけないだろ!だって、あれ…!」


 そう…ステラが用意したミニチュアステラセットの中には、あろうことかパンツまで入っていたのだ。それってつまり…


「あれは…さすがに…!無理だろ!いろんな意味で!」


「お嬢様!」


 ほらー、爺やも怒ってるよ!


「殿方のスカートをめくるなど、はしたないですぞ!」


「いや、爺や?言い方…その言い方は…なんか……なんか……」


「だって、ファッションは見えないとこも大事とか言うじゃないか。下着までおそろいの方が…なんか……良いだろ?」


「その変態的な情熱はいったいどこから来るんだ…」


「ふ…それは私の胸の奥から…」


「黙れ」


「辛辣!」


 しまった。つい乱暴な言い方をしてしまった。


「ごめん、爺や。つい…」


「私には謝ってくれないのか…?ユキト…」


「いえ、ウサギのこととなると、ステラ様は少々やり過ぎる所がありますので…もっときつく言ってもよろしいかと」


「爺やまで!?」


 爺やにまで冷たくされて、しょんぼりするステラ。まあ、これで少しはおとなしくなるだろう。そう思ったその時。



 ドゴォォォン!!!



「っ!なんだ!?」


 外から突然、大きな音が聞こえた。大きなものが落下してきたような衝撃。城全体が大きく揺れる。


「いったいなにが!?」


 ミニチュアステラセットを乱暴に脱ぎ捨て、バルコニーへ走る俺と爺や。後ろから「ああ、せっかく作ったのに…」というステラの声が聞こえたが無視する。


 バルコニーへ出た俺は、そこで見た光景に驚愕した。


 その視線の先には、

 怪獣。

 怪獣としか言い様のない巨体があった。

 鎧のような機械と、豚を無理矢理ごちゃ混ぜにしたような怪獣。

 東京タワーほどではないが、民家を軽く超えるサイズ。


 あのとき見た怪獣にそっくりな怪獣が町を破壊する姿に、俺はただただ愕然としていた。


「…怪…獣……?」


「ユキト?どうした!?あれを知っているのか!?」


 ステラが俺の肩をつかんでまっすぐ見つめてきた。

 あのときの光景がフラッシュバックし、うまく息ができない。苦しい。


「はあ、はあ、よく、わからない。でも、あれとは別の怪獣に、俺は…!」


「すまない!大丈夫だユキト!話は後だ!爺や!あれを止める!騎士たちを集め、城下町へ!」


「かしこまりました!」


 俺がもたもたしてる間に、ステラ達は素早く行動し始める。


 ………なにやってるんだ?俺は?俺はもう一度、城下町へ目を向けた。怪獣が暴れている。町を、人を、魔物を、破壊していく。


 その光景を見て、俺が感じていたのは、失望?絶望?恐怖?いや………違う!


「ステラ!!!」


「っ!ユキト?」


「俺も行く!行かせてくれ!!」


「いや!危険だユキト!君はここで…」


「守りたいんだ!今度こそ!!」


「っ!!…ユキト………」


「…………………」


「…………………」


「…分かった……ただし、条件がある」


「なに?」


「これを着ていくんだ」


 ステラは爺やとおそろいの燕尾服、ミニチュア爺やセットを差し出した。


「…………………?」


 え、なんで?


「こんな時にコスプレしてる場合じゃ…」


「いや、真面目に言ってるんだ。この服にはこんなこともあろうかと、防御魔法が付与してある。致命的なダメージでも、一度くらいなら耐えられるはずだ」


「マジで!?」


 そういうことなら着ていこう。急いでミニチュア爺やセットを装備した。


「………嘘じゃないよね?」


「信用してくれ!さすがにこんなときまで冗談は言わない!」


 そうだね。ごめんステラ。変態があまりにも変態だから疑心暗鬼になってたよ。


 とにかく、準備を整えて城下町へ向かう。城の構造をまだ把握できてない俺は、ステラの脇に抱えられる状態で出動するはめになった。いまいちかっこつかないな…




【フィア・グランツ王国 城下町】


「ユキト、とにかく無茶はするな。自分すら守れないやつに、誰も守れはしないぞ」


「…分かった」


 ステラの言葉を肝に命じると、現場にたどり着いた。もうすでに騎士たちが戦っている。


「ユキト、まずは遠くからやつの動きをよく見るんだ。そして自分にできることを見極めろ」


「うん!」


 とりあえず、近くの屋根に飛び乗って様子を見ることにした。


「我が名は!フィア・グランツ王国、王女にして騎士団団長!ステラ・フィア・グランツ!推して参る!!」


 ステラが怪獣に向かって走り出す。

 ステラの声を聞き、士気が上がった騎士たちは、すぐさまステラの援護にまわる。

 負傷した騎士は住民の避難誘導に専念している。

 怪獣の近くで戦っていた騎士たちが、怪獣の足を切り裂いた。

 怪獣がわずかによろめく。


「ステラ様!今です!」


「おお!」


 ステラがちょうど怪獣にたどり着くタイミングで隙を作る騎士たち。そしてステラの剣が赤く輝いた。


「フィア・グランツ流、魔法剣!フレイムソード!」


 ステラは怪獣の大きな股をくぐり抜けながら、内ももの辺りを炎の刃で切り裂いた。

 グオォ!と、呻く怪獣。

 す、すごい。あんなに大きな相手に、少しも怯んでない。


「離脱!!」


「はっ!」


 ステラの掛け声と共に、騎士たちが距離をおく。

 すると、さっきまで騎士たちがいた辺りを怪獣が大きく凪ぎ払った。

 しかし当然、空振りに終わる。


「突撃!!」


「はっ!」


 再び数人の騎士たちが怪獣に切りかかる。そしてステラの剣が、今度は黄色く輝いた。


「サンダーレイピア!」


 怪獣の背中に、雷の刺突が降り注いだ。怪獣がふらつく。だが…


「グオオオォォォォ!!!」


 突然の怪獣の咆哮に、近くにいた騎士たちが怯んでしまう。


「く、まずい!」


 俺も咆哮はキツかったが、遠くにいたおかげで大丈夫だった。


 後ろ足をバネのように縮め、一気に飛び跳ねる。

 咆哮を終えて攻撃に転じようとする怪獣の顔面に、蹴りを叩きこんでやった。


 思った通りだ。この身体、かなり素早く動けるぞ!撹乱するぐらいなら、俺にもできる!


「グアァ!?」


 蹴りが眼球に直撃したのか、たまらず顔を押さえる怪獣。


「ナイスだ!ユキト!」


「おぅ!」


「全員、離脱!」


「はっ!」


 全員が怪獣のそばから離れると、怪獣がその場で両手を振り回して暴れだす。ステラの剣が青く輝いた。


「おとなしくしろ!フリーズランス!」


 氷の槍が怪獣を貫く。すると、全身が凍りだし、動きが止まった。


「やったか?」


 俺がうかつに怪獣の近くの屋根に着地した、その時。


「よけろ!ユキト!!」


「え?」


 いきなり怪獣を覆っていた氷が砕け、俺の体を大きな衝撃が襲う。

 後ろに吹き飛ばされたと思ったら、拳を振り抜いた怪獣が見える。殴られたのか!?


「ユキトォォォ!」


「うおぉ、すごい衝撃だ…!でも、ぜんぜん痛くない!」


 すごいなこの服!上空へ飛ばされ、自由落下していく。そして…

 パァァァン!!

 という破裂音と共に、ミニチュア爺やセットは勢いよく弾けとんだ。


「!?」


 一瞬で裸になる俺。まあ、もともと裸だったし、小動物はそもそも服を着る必要はない。だが…

 服が無くなったこと以外は問題なく着地した俺にステラが駆け寄る。


「大丈夫か!ユキト!」


「大丈夫じゃねぇよ…」


 ステラの胸ぐらを乱暴につかんで、ぐいっと顔を引き寄せた。


「説明」


「ああん、ユキト、そんな大胆な…」


「説明!」


「例の防御魔法。あれは衝撃を全て服に受け流し、ダメージを完全に防ぐ優れものだ!強い衝撃を受けると、脱げてしまうのが玉に傷だが、敵の攻撃で服が脱げるのはロマンだからな!問題無かろう!」


 遠巻きに見ている騎士たちが、「また始まったか…」と、ため息をついている…


「そのロマンって、雄の小動物にも適用されるんですか…?」


「ふ…私の胸の奥には…」


「黙れ」


「辛辣!」


「ステラ様!来ます!」


「「え?」」


 ステラと俺が振り返ると、怪獣がすぐそこまで迫ってきていた。


「グオォォォ!!!」


「「ふおぉぉぉ!!」」


 同時に叫ぶステラと俺。ステラが腕に着けている小ぶりな盾を構えると、光の壁のようなものが怪獣の突進を食い止めた。


「くっ!あぶなかった!ちなみに、期待してくれているところ申し訳無いのだが、私に付与されてる防御魔法は、服ごと魔法障壁で包み込むタイプだから、むやみに脱げたりはしないんだ!すまない!」


「いや、期待してねぇし!戦いに集中して!」


 あと、そういうの俺にもちょうだいよ…


「しかし、戦況があまりよくない。皆も疲労がたまっているな。ここは一時撤退する!待機している騎士と交代するぞ!ユキト、背中に捕まれ!」


「わ、分かった!」


 ステラと一緒に撤退するため、背中に飛び乗った。


 しかし、飛び乗った瞬間、俺の身体が輝きだした。そして、重力から解放されたかのように、ふわりと身体が軽くなる。


「ん!?なんだ!?ユキト!?ちゃんと背中にいるか!?」


「う、うん!いるよ!でも、なんだこれ!?」



「『接続コネクト』よ」


 頭の中に声が響く。ネメシス様!?


「叫びなさい『接続コネクト』と!」


 何がなんだか分からないが、とにかく、ネメシス様の言うとおりにやってみることにした。



「こ、『接続コネクト』!!」


 そう叫ぶと、俺の両手からステラの身体に、なにかが流れていく感じがした。

 そして、二人の身体から衝撃波が広がり、怪獣を吹き飛ばす。


「…なにをしたんだ?ユキト。力が、魔力がみなぎる!」


 もしかして、これ、俺の魔力がステラに流れ込んでるのか?


「今なら、なんでもできる気がする…」


 頭の中に、怪獣を真っ二つに切るイメージが流れ込んでくる。これは、ステラのイメージ?


「今の私達なら!」


「「なんでもできる!!」」


 気分が高ぶり、俺も一緒に、ステラと叫ぶ。


「「行くぞ!!!」」


 両手で剣を持ち、深く構える。下から切り上げるイメージ。剣が光輝く。踏み込むと、一瞬で懐に潜り込んだ。怪獣は反応すらできない。


「「フィア・グランツ流、魔法剣!奥義!!」」


 輝く衝撃波が、怪獣をふわりと地面から引き剥がした。


「「シャイニング・スラッシャァァァァァ!!!」」


 剣を振り抜く瞬間、光の剣が長く伸び、空まで切り裂いたように見えた。そして怪獣の身体は斜めに切り裂かれ、キラキラと光りながら塵になって消えた。


「や、やった…」


「ああ、イメージ通りだ」


 二人の身体からも、光が消えていく。


「でも、これ…」


「ああ、これは…」


 ぐらりと、二人の身体が崩れ落ち…


「「めちゃくちゃキツい!」」


 ドサッと、仰向けに倒れた。


「なに、これ、だるい…疲れた…痛っ…!」


「身体が、軋む…!…なんだこの激痛は…!」


 疲労と激痛で一歩も動けなくなった俺たちを、騎士たちと爺やが回収してくれた。

 さっきのは一体何だったんだろう?後でネメシス様に聞いてみないと…




【フィア・グランツ王国 ステラの部屋】


「申し訳ございません、ユキト様。怪我人の治療でベッドが足りませんので、ユキト様にはお嬢様と同じベッドを使っていただきます…ご武運を…」


「その言い回し、ベッドで休むときに使うヤツでしたっけ…?」


 そんなわけで俺とステラは今、ほとんど動かない身体を同じベッドで休ませていた。


「くっ!同じ部屋、同じベッドで寝ているというのに、なにもできないとはっ!不覚っ!!」


「おとなしく寝てて…?」


「ぐぉぉぉ…!ユキトォォォ…!」


 激痛をこらえながら、ジリジリと近寄ってくるステラ。


「こっち…!くんなぁ…!」


 それを足で押し返す俺。


 二人はベッドの中で地味な攻防を繰り広げたのち、ほぼ同時に寝落ちした。

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