朝霧


霞のかかる記憶の森で

彷徨えば深い夜


外套の残り香すらも

纏うほど肌寒く


月を閉ざした鏡の湖面

あなたを探し迷いのほとり


藍を溶かした星の天蓋

願えども遠い天涯


寄る辺なき無為の追憶

振り仰ぐ終なき孤独


祈りすら我が身に重い

もう再びは還らぬ想い


ただせめて夜が明けるまで

いま再びと瞼を閉ざす


あなたを偲ぶ凍る我が身に

ひそやかに忍ぶ朝霧


やがて静かにすべてを覆い

音も無く逝く願い


目が覚めて名を呼んだ

涙伝いし明け方の夢

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る