瘍跡-シルシ-


欠けおちた痩身の月

まるで互いの心模様と


すべてを閉ざす茨の森で

寄り添うように肌を重ねた


流れる髪はわだつみの碧

その心音と以外の静寂


痺れる程に甘い口唇

睦言に酔う吐息を紡ぐ


指先に触れるロザリオ

祈りは果てに罪と成すのか


踏み入れたその深みには

後悔の足音もなく


澄み渡る水面の眸

鏡の様にわたしを映す


互いしかない閉じた世界で

夜の深みで息をひそめた


終わらぬ様に願いながらも

もうはじめから覚悟していた


行く先のない想いの先に

寄る辺ない結末がある


その頬を伝う涙を

あとどれ程に拭えるでしょう


その胸に顔を埋めて

少しだけわたしは泣いた


互いしかない無垢な世界を

いずれ朝陽が引き裂くならば


それでもどうか証の様に

消えない痕を残してゆこう


絡めとる舌と指先

満たされぬ渇きのままに


この身がいつか灰となるまで

あなたのなかに消えぬわたしを

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