夜離れの雨(乙女よ)

夜離れの雨はいと淑やかに

街に人に我が胸に降る


枯れぬ泪に似た焦がれには

ただ幾許か後悔のある


無垢な赤子の柔肌に似た

追憶ならば野薔薇の香り


去りし汝の名を繰り返せども

かくも果敢無き遠き面影


乙女よ

誰がためにいまは歌わん

甘き恋に身を震わせて


乙女よ

誰が胸にいまは眠らん

我が黄昏を此処に残して


乙女よ

誰が愛に身を寄せて

なお麗しくあるだろう


夜離れの雨はいまだ秘かに

我が胸にのみ降り頻り


夜離れの雨は言葉少なに

根雪のように深く悲しき

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る