深海には人魚の骸がある


深海には人魚の骸がある


うすぼんやりとした

燐光を放ち

タァルの様な暗い底に

どんよりと横たわっている


かつて

それには名もなく

ただ人魚と呼ばれた

記憶だけがある


気が遠くなる程の

永きを泳ぎ

誰に呼ばれたのかすら

忘れ果てた時


それは

自らを棄て

そして

此処に彼岸を寄せた


深海には人魚の骸がある


うすぼんやりとした

燐光を放ち

真っ白な骨となる日を

声もなく待っている


それは待っているのだ

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