出発前夜の夕食

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 あらすじ:クレスに説明を受けて



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 ――その日の夕食時。


 今日はエリナとアリーシャペアが食事当番だ。やっぱいいよな。女性に食事を作ってもらえるなんて。

 俺はそこまで料理は作れるほうではないし、誰かに料理を作ってもらえるってことはこの世で一番の幸せだと思う。


 【何でもない様なことが、幸せだったと思う】 


 こんな言葉があるように、些細なことが実は一番幸せだったんじゃないかと思う。


 アリーシャが俺の正面でニコニコしていた。


「ねぇ、くうとくん、それあたしがつくったんだよ、おいしい?」

 ああ、これはわかった。

 女がこう聞いてきた場合、それは疑問ではなく「おいしいでしょ」という確認の意味があることに注意すべきだ。それを馬鹿正直に疑問に受け止め「ううん、あんまりおいしくない」などと答えようならば、間違いなく嫌われるわけだ。

 これはある人の話だが、「ねぇ、おいしい?」と聞かれて、「これあんまりおいしくない」と言ったそうだ。次の瞬間、フライパンとか鍋とかまな板が飛んできたそうだ。…………うん、口は禍の元だ。


 いや、別に俺は正直者だから、嫌われようがどうでもいいんだがな。――ただ、残念なことにアリーシャの食事は実際美味しいからな。こんな事言うつもりはないが、毎日作ってほしいレベルだ。



「ああ、アリーシャ。これ凄くおいしいよ!」

 これは俺の本音である。ちょっとオーバーぐらいだが、俺の考えてる事を口にするよりはマシだろう。正直ゴマすりをするのは本当に苦手なので本音で喋る。


「やっぱり! くうとくん、うれしぃ!」

 そう言ってアリーシャは、食事中に抱きついてくる。こいつ、時々不思議と俺の考え読んでいる節があるんだよな。なんか見透かされているというか、なんというか。


 ――エリナが突然立ち上がりアリーシャに向かって行った。


「アリーシャ! クウトが迷惑でしょ! クウト、アリーシャこんなんでいつもごめんね」

 俺の考えを読めていないエリナがアリーシャに怒り、俺に謝罪してくる。いや、別に大丈夫だぞ。


 ちょっと前なら大それたことだが、今にしては大したことじゃないと思っている。


 これがいわゆる”アレ”の秒読み前というやつだな。


「ごほん! まあ、アリーシャも、あんちゃんもだ。そうゆうのは二人だけでやってくれるとありがたい」

 アズラックはそういう。こいつ、ついこないだまで姫奈ぴいなにメロメロだったろ。…………まったくもってして説得力の無い言葉である。こいつと出会って一ヵ月の間みてきたが、一体何人の女に手を出してるんだろう。本人のみが知るのだろう。


 クレスは複雑な顔をして無言で食事をとっている。クレスは何か思うところがあるのだろう。


 アリーシャはその言葉に不快感を示す。何か言いたそうだ。

 


「それはともかく、この先どうするんだ?」

 これ以上この話を進めてはいけない! そう思った俺はこの話を切り出す。


「ええ、まずは明日からイーストウッド国へダンジョンを通って向かいます。本来は関所を通るのですがダンジョンを通ったほうがトラブルなく通過できます」

 クレスは吹っ切るように言う。


「じゃあ明日はダンジョンを通過してイーストウッド国へ入国だと思うんだが、そのダンジョンは何階に繋がっているんだ?」

「ええ、大体15階の中間地点ですね」

 俺の疑問の質問に即時にクレスは答える。


「そのダンジョンの強さはどんな感じだ?」

「今のクウトなら問題ないわよ」

 エリナはそう答える。


「もし、ここで修業しなかった場合は?」

「ええ、そんな状態ならすぐ野垂れ死にでしょうね」

 その疑問にはクレスが答える。

 そりゃあまあ、この世界に来たばかりだしな。そうなると皇帝しいざあは大丈夫だろうか? 悠斗ゆうと姫奈ぴいなは正直どうでもいいがな。


  ――――明日出発という事で俺は夕食を済ませ、自室へと向かうことにした。





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