裏路地へ逃げ込み、脱出!
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あらすじ:謎の集団から逃げて
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――裏路地に3人で逃げてきたわけだが、気になる点が一つ。
「なぜ、みんなは俺を助けてくれるんだ?」
今更ながらそう思うが、当然の疑問じゃないか。
だって、異世界人は言うなれば周りを厄介ごとに巻き込む存在に他ならない。
これまで、この世界での歴史が――それを証明している。
そんなのと一緒にいたら冒険者としての活動もやりにくいだろう。
「あんちゃん、今更いいっこなしだぜ!」
「そうですよ。王宮に招かれたほうがあなたの待遇は良くなるのに、私たちの都合で連れまわしてるのですから」
2人はそう言うのだった。
ちなみにアリーシャとクレスは後方で殿になっている。なぜか憲兵団と戦闘になっていて爆発やら様々な音が聞こえる。
………ああ、こりゃあ近々お尋ね者だな。
「あの2人に任せてここは離れるべきだ」
アズラックが言うには、こうなるのは想定済みらしい。 毎晩のように酒場に顔を出していたのはその辺の情報を集めるためのようだ。
――――むしろ、こうなるのは遅いぐらいだそうだ。
俺の知らないところでアズラックは姫奈や皇帝を見かけたらしく、遠巻きに彼女らの話を盗み聞いてたとのことらしい。
俺が姫奈の特徴を伝えるまでアズラックは彼女のことを知らなかったのだが。
おそらく見かけたのはそのときだろう。
ちなみに、俺は、転生初日以降は冒険者ギルドには顔を出しておらず、報酬金だけ分配してもらっている。
一応パーティ登録をしているのでギルドの貢献度は上がってるみたいだが。
エレナが言うには「ごめんなさい、クウトは当分ギルドランクを上げることは出来ないので、Fランクのままなの」との事。
もちろんこれには理由があり、俺に表立って活動をさせないほうが良いだろうとの判断だ。
だから謝られるどころか、むしろ凄く有難い話で、そのおかげで今まで、こうして
現にこうしてトラブルになってるんだからな。そりゃあ同じ町に居ればいずれはこうなっていただろう。
エレナやアズラックの言うように、結果的に俺についての情報は冒険者ギルドにも一切回らず、姫奈、皇帝、悠斗にも情報が全く届いてないようだったようだ。
――ちなみに、今俺たち3人は隠密スキルを使っている。
俺は今日覚えたばかりなので練度も効果も低いが、一般人から姿を隠すには問題ないレベルだろう。
そもそもだ、このスキルを覚えた――いや、覚えさせられたのは、アリーシャの問題行動が原因だ。
――ここ一週間、あいつの猛烈アタックにはほとほと手を焼いた。
例えば清拭中。
この世界では、風呂というのは貴族や裕福な商人の邸宅にあるぐらいの贅沢品である。
当然冒険者向けの宿なんかにはない。なので絞った布で身体を拭くぐらいがせいぜいなんだが、油断してるとその最中に侵入してきたりと、とにかく一人の時を狙ってくるのだ。
気配察知スキルのおかげで悪意には即座に対応できるが、ちょっとした悪戯には反応しないし、ましてや善意からの行動だとスキルは反応してくれない。
何日前だったか、押し倒され襲われたときに、「クウトくぅん、大丈夫だよっ!天井のシミを数えてたら終わるから」等と耳元で囁かれたときは本当にやばかった。
理性が飛んで、もう流されるがままの状況だったが、クレスが止めてくれたおかげで色々と失わずに済んだ。
どうもエリナが居ないときを狙ってきたようだが、目算が外れたな。
アリーシャの目的はいまいち分からない。
最初の三日はレベルと力の差が圧倒的で、手篭めにされそうなときも何度かあったのだが、さすがに4日目以降になると力の差は埋まってきて、抵抗できるようにはなってきている。
戦闘用にとスキル振りした回避のスキルも、思わぬ用途で活躍してくれている。全く持ってどうでもいいが。
――話は逸れたが、アリーシャ対策で躍起になって覚えた隠密スキルなんだが、こうして本来の用途で役に立っている。
ちなみにエリナは隠密スキルが得意なので別格として、アズラックも俺よりは当然隠密スキルレベルが高いが、エリナ曰く、「アズラックはすぐ追い抜けるだろう」とのこと。
――俺たちは、なぜそんな危険を冒して王都に滞在していたのか?
ここ一週間、この王都でこうして潜伏しているのには理由がある。
他国への関所を通るには、身分証明が絶対に必要となるからだ。
これは冒険者であれば冒険者ギルドプレートがそれ《証明》になる。新人が派手に活躍なんてしたら『俺は異世界人ですよ』と喧伝しているようなものだろう。大人しくしてても、関所で調べて異世界人だってバレたら、隣国に行くどころか王宮にUターン間違いなしだろう。
ちなみに今更だけど、王都でプレートを無償で発行しているのは、冒険者活動を支援するためだとか、身分証明を得やすくするだとかの耳障りのいい理由もあるが、王国側が有力者の位置情報を管理しやすいと言った王国側のメリットももちろんあるのだ。
他国で発行すると正規の料金がかかるようだ。
全くメリットがないわけじゃないが、冒険者ギルドで素材の買い取りなんかもできて便利なのだが、やっぱり専門店に持ち込むのと比べると安く買い取られる。
あくまで仲介なので高いところは高いようだが、それはまた別の話。
例えば商人ギルドに持ち込んだ方が高く売れるのだが、じゃあ必要な数と品質を揃えた上で定期納品できるのかって話。
それ以前に、そもそも四則演算も怪しいただの│
――ちなみにエリナは冒険者ギルドの登録もあるのだが、商人ギルドの登録も持ってたりする。さすが異世界人。ただランクまでは聞いていない。
閑話休題。
「あの人は気配察知スキルを取ってないみたいで助かったわ」
エリナはそう答えると安堵する。たぶん悠斗のことだろうな。
「異世界人も最初はあんなもんだろうよ。とにかく、あんちゃんを連れてこのまま王都脱出だ!」
アズラックもやたら乗り気だ。
俺以外の4人は何らかの方法で国外に脱出できるのだが、俺はそうはいかない。
何せ関所でギルドプレート《身分証明》を調べられたら、身元がばれてしまうのが厄介だ。
どうやらクレスが何かの伝手を持ってるとの事で、上手い事関所を抜ける方法を探ってたようだ。
今日それが実現するはずだった。悠斗もタイミングが悪い。
――ただ、俺が居なければ、俺以外は他国に移動できたってことになる。つくづくおれは足手まといだな。この4人の目的はまだ定かじゃないが、こうして身を挺して守ってくれてるので信用に値するだろう。
しかし………この二人、やたら息ピッタリなんだが、過去に何があったんだろうか? 元恋人とか、か? ――いや、個人の事を詮索するのはマナー違反だろう。必要ならいずれ知ることになる。
こうなることを想定した上で、クレスとアリーシャは後で合流地点に来るらしい。
――こうして俺は3人でそのまま王都を脱出することになった。
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