恋に愛が抜かれ、愛は恋を笑った

赤井飛猿

第1話        

   

惚れやすいのかもしれない。そう思う。


青春時代の恋愛ドラマを見直したら「こんな恋愛してみたい」というのと「自分の恋愛もこうだったなあ」とふたつの感覚に襲われた。


二人を同時に好きになったこともあった。

「どちらにしようかな」なんて贅沢に迷うんじゃなくて、嫌いで別れたわけじゃない人に別れた後も優しくされている間に、別の人と新しい環境下で恋仲に発展しちゃって。だんだん抱えきれないことになってはちゃめちゃに。ここらが、ドラマに引けを取らない恋愛だったかな。

二度とゴメンだけど刺激的だった。


身から出た錆。自分のけじめのなさが原因で誰も幸せになれず、とことん自分が嫌になったわ。

でも、当分は恋愛はいらないやって決心したのに、しばらくった今また求めるようになってきた。次はどんな恋愛が待ち望んでいるのか。


過去にこんな事を言われたことがある。

「君と一緒、綺麗な物しか愛せない」

同僚同士で楽しくお酒を飲んでいる時だったかな。突然の発言に凍りつく皆んなの手前、笑って誤魔化すしかなかった。彼はお酒が弱く、普段、飲みの場に顔を出さないのに頑張って社交に付き合い、ついついお酒の力で想いを口にしてしまった。

同僚はなんとなく感じていたことだから大人な対応をしてくれた。


わかりづらい告白だったけど、勇気を出して告白してくれたのは嬉しかった。


私生活はお互いあまり知らなかった。仕事面で耽美な性格者というのは意識していて、同類愛を求めてのことだったのかなと思う。




彼に告白された僕、あの言葉は何故か今でも心に残る一言になっている。


直接、同性から告白を受けたのは最初で最後だったが、ものすごい衝撃だったと思う。そして、恋愛の奥深さを再認識した。

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