第2話 ダンジョン管制室
階段を降り終わった先は長い地下通路だった。
二人が入ると通路の天井がぼんやりと光りだして灯りは不要だ。
通路は巨大な岩をくり抜いたかのような作りで、隙間が見当たらない。
「どうやらまだ機能が生きておるようじゃぞ!」
魔王は興奮気味に話す。
しばらく進むと行き止まりになったが、魔王が壁に手を当てるとまた魔法陣が現れて左右に扉がスライドした。
魔王とエイダは中に入る。
そこは机と席が半円弧状に並ぶ広い部屋だった。
奥に行くほど床が掘り下げられている。
「荒らされておらぬよ!」
魔王はうれしさにピョンピョン跳ねた。
「こんな場所が隠されていたなんて!」
エイダは興味深そうに眺める。
手前の席がひと際大きく豪華に作られており、この部屋の主人が座る席なのだろう。
魔王は迷わずその席に座る。
その前の机には小さな魔法陣が様々に並んでいる。
「認証用の魔法陣じゃ」
魔王が魔法陣に手をかざすと声が響いた。
<こちら魔王城ダンジョン管制室、管理精霊ダーマです。管制官を認証してください>
「よし、まだ生きておったか! 魔王を認証するのじゃ」
<魔王陛下の魔力波長を認証、お帰りなさいませ>
「状況を報告せよ」
部屋の奥の空間に映像が浮かび上がった。
円グラフや棒グラフ、様々な数字が表示される。
「まだ魔力が残っておるな! いけるぞ」
魔王城を外から見た映像、城内部の各所を映した映像、魔王城の周辺映像なども映し出される。
「ここは警備室ですか!?」
「くくく、その程度のものではない。ここは魔王城防衛の要、ダンジョン管制室じゃ。思うがままにダンジョンを構築して魔物を配置できる。ダーマよ、使える機能を報告するがよい」
<現在使用できる機能は次のとおりです>
<魔王城のダンジョンモード転換。ダーマの残存魔力99%を消費します>
<ダンジョン構築、基本配置。壁、床、扉、階段を配置可能です。配置には魔力を要します>
<ダンジョン構築、ポップサークル配置。コモン級魔物の配置が可能です。配置には魔力を要します>
「ふむ、最低限は使えるようじゃが」
「早速使ってみましょう!」
魔王は困り顔になった。
「そう簡単にはいかぬのじゃ。まずは魔王城をダンジョンモードに切り替えねばならぬし、そうするとダーマに残っていた魔力をほとんど使いきってしまうし」
さっきまで偉そうだった魔王はしょげている。
「魔力さえ取り戻せば、いろいろとできるのじゃがな……」
「あの~ 魔王様、冒険者を集めればいいのでは」
「なんじゃと?」
「ポップサークルは冒険者の血や魔法を魔力に変換するんですよね。ダンジョンに冒険者を集めて魔物と戦わせれば魔力が溜まるのでは」
「……どうやって集める?」
「魔王様が復活したことを宣伝すれば大勢やってくると思います!」
魔王は大笑した。
「余を囮にせよと言うかや、まったく汝は四天王を思い出させおるわ」
「す、すみません!」
「いや、面白い。もはや他に使えるものとてないのじゃ。この身を使うてやろうではないかや」
魔王はやる気を出した。
「ダーマよ、設計図を呼び出すがよい」
新たな映像が魔王の手前に浮かび上がる。
ダンジョンの構造を描いた地図のようだ。
魔王が小さな手を伸ばして映像に触ると、地図の構造が変化していく。
「ふうむ、現状では地下一階分を作るのが限界じゃな。工夫せねばなるまい」
魔王がダンジョンの設計を考え、エイダが管制室を見て回っているうちに時間が過ぎる。
エイダの腹の虫が鳴いた。
魔王のも続いて、二人は頬を染めた。
エイダは荷袋から食糧を取り出した。焼き締めたパンに干し肉だ。小さな荷袋から、見た目以上に大きな物が出てくる。この荷袋も魔道具の一種なのだろう。
エイダは食糧を携帯用の皿に盛って魔王に差し出す。
「携帯食糧しかないのですが」
「いただこう。三百年ぶりの食事じゃな……」
魔王は堅いパンをよく噛んで味わう。
「うむ、美味い」
「良かったです!」
エイダは水筒も取り出して携帯用コップに水を注ぐ。水筒の水はすぐ無くなってしまった。
魔王がコップに手をかざして魔法陣を発動させた。水が湧いてコップを満たす。
「魔王様、魔力が残り少ないのでは」
「この程度なら軽いものよ。飲むがよい」
「いただきます!」
コップの水はよく冷えていて素敵に美味しく、エイダは感動した。
こうして二人はささやかながらも楽しい食事を終えた。
明日からは冒険者集めの開始だ。
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