第45話 生徒に教えよう 2

「おおっ…。やっとるやっとる。冒険者の方々に来てもらって正解じゃわい」

学園長のワシは、今日を楽しみにしとった。子供たちの授業の様子をな、仕事でクソ忙しい中…ちょっとだけ見ようと来てみたのじゃ


「子供といえば…あの悪ガキじゃった、バルトの倅が来るとか言っとったが…結局こなんだか…」

聞けばまだ8歳というではないか。なれば心変わりもしようて…

独り言を言いながら歩く

と、ワシの目に異様な光景が映る


「…ん?なんで戦術科の子供たちは、裸で泥んこなんじゃ?」

学園長は自身の目を疑った。授業の様子を観に来たのに、生徒が泥だらけで座っていたからだ


「君、すまんが…あの子達は何しとるんかの?」

学園長は一部始終を見ていたであろう、教官に尋ねた

「これは学園長。あの子達は戦術科の生徒で、イッキ先生が授業をされてます。なんでも気配を断つ訓練だとか?…でも、ただ泥遊びしている様にしか見えませんよね」


…ん?いま何と言った?

「イッキ先生?」

「そうです。イッキ先生ですね。又聞きなのですが、バルト様の御子息らしいのです」

なんと!あの悪ガキの息子かっ?!


「あやつの息子なら、ただの泥遊びじゃなかろうて…。このワシが授業を直接観てやろう」

学園長はイッキが教えている場所に向かった


〜〜〜


「エメリー、いまっ!」

イッキは女生徒のエメリーに合図を出した

「ほいっ!ウチのパンツを見ろっ」

エメリーはスカートを勢いよく捲る。薄紫のパンツが丸見えになった


"ピンっ"

"ピンっ"

"ビンっ"

……

「キミたちねー、勃起したらダメじゃないか…。いい?今ここが戦場なら、死んでるよ?」

イッキは『は〜やれやれ、これだから童貞はっ』と溜め息を吐いた


「先生、無理だよ」

「エメリーのパンツを間近で見て、勃たない奴いるか?」

「いないっしょ…」

「先生は我慢できるの?」

「いや、無理じゃね?先生は子供といっても男だぞ。勃起するに決まってるさ」

ほう…。この僕を煽っているみたいですね


「いいでしょう。さあエメリー、かかって来なさい」

イッキは座禅を組むと目を半開きにし、両手を膝の上にのせた

「先生〜、いっくよーっ!」

"バサッ"

(薄紫か。…いや待て、よく見たら毛の黒が薄っすら見えるね)


「先生凄え、勃ってないぞ」

「ほんとだっ。ピクリとも動かねえよ」

「俺らの後だから、耐性がついたとか?」

「あー、ありえるな」

(あのタテの溝はもしかして?…いや、生地のシワかもしれない。決めつけるのは時期尚早だよね)


「先生ねばるーっ。それともウチ、魅力ないのかな?」

男子生徒は揃って首を振る

「先生、おまけっ」

"ズリッ"

「「「ぶはっ?!」」」


「きゃっ?! ちょっとキエラっ、パンツ下ろさないでよね!」

男子生徒は鼻血を出した

(やっぱりタテの溝は、大地のワレメだったか。地殻変動で少しふっくらしてますね)


「先生はバケモンだっ」

「凄え…ピクリともしてねえよ」

「俺たち鼻血まで出し…お前、下も出したのかよ!」

「仕方ないだろっ。限界だったんだよ」

「ま、まあ…そうか。そうだよな…」


「先生やるぅ〜」

「キエラ、あんたね…。男共もタダで見れたと思ってないでしょうね?」

「「「カネとんのかよっ」」」

……

「…学園長、このお金は?」

エメリーにさり気なくお金を手渡した学園長。鼻からは赤い汁が出ていた

「ほっほっほ。気にせんでええ、とっておきなさい」

胸元を鼻血に染めた学園長は満足気に頷いた

「すごいよ、エメリー。これ十万ドルン金貨じゃない?!」

どうやらエメリーに十万の値がついた様だ


「それよりもイッキ君、いや…イッキ先生、まるで自然と一体化したような気配の断ち方、見事でしたぞ」

イッキに労いと尊敬の念を伝える学園長

だが、当の本人は独り言をブツブツ言っている


「マントルに樹海は必要ない気がする…。やはり子供はツルツルであるべきだっ!」

突然目を"クワッ"と開くイッキ

「な、何やら高度な内容ですな…」

さすがの学園長も分からなかった。それもそのはず、イッキが言ったのはタダのエロ話しだからだ


「おや?あなたは?」

ようやく馬鹿が学園長に気がついた

「ワシはこの学園の学園長をしとるダンベルドアじゃ。よろしくの、イッキせ…

「おしいっ!ギリギリでおしいっ。あと一文字違ったら完璧だったのに」

「おしい?…何がじゃ??」

イッキの"おしい"発言に頭を捻るダンベルドア。姿・雰囲気はあの校長だった

……

「だとしたら、裏切りは貴様かーっ!」

突然イッキが、ぽっちゃりロン毛の教官に掴みかかる

「ちょっ?!やめて下さいっ」

ぽっちゃりロン毛の先生は必死に抵抗した


「どうせカラダのどっかに"印"があるんでしょ?…僕には分かるんですよ。この僕にはね」

イッキは『伊達に3回も観てないんじゃー』と意味不明な言葉を発して、脱がしにかかる


「きゃー?!」

「きゃー?」

"すぽんっ"

服を剥ぎ取ると…どうやら女性だった


「やめてって言ったのに…」

『うわーん』と泣き出したぽっちゃりさん

周囲の沈黙が痛い

「…さて、皆さん。泥んこになった体を洗いに行きましょうか」

何事もなかったかのように去ろうとするイッキ

「待ちなさいっ!」

"ガシッ"

ぽっちゃりロン毛の女性に呼び止められる

その上、背後から肩を掴まれたよ。逃げれないね

「私に何か言うことないの?」

目ヂカラが凄い。言葉を間違えたら殺されてしまいそうだ


→あやまる

 あやまらない


(うーん…。認めたら完全に悪者になっちゃうね)


 あやまる

→あやまらない


(むう…。しらばっくれたら、冷血漢に思われちゃうよ)


ココは選択ミスが許されないぞ…

だが、百戦錬磨の僕にかかれば楽勝さっ


「たるんだ下っ腹、みっともないでぶはぁっ


張り手をもらったイッキは飛んで行く

「気にしてる事言わないでっ!」

気にしてるなら何とかしろよ、と皆んなは思った


「ポム先生、待ちなされ。イッキ先生も悪気は無かったと…

「悪気がないのに私の下っ腹を責めるんですかっ?!」

ダンベルドアが話に割り込んだものの、ポム先生に言い負かされてしまった


ポムは自分の下っ腹を手で摘んで、ポヨポヨさせている

「責めとらん責めとらん。しかしじゃな?ポム先生、自分からアピールするのもどうかと思うのじゃが…」

「?!」

ポムは自分の上衣が、下着1枚という事に今更ながら気がついた

その上、自分でも気にしている下っ腹を、自らアピールするかのようにポヨポヨさせている事にも…

「すみません、学園長。私はこれで…」

そそくさと逃げる様に去って行くポム

「ああ、そうじゃな…」

現場に残された者たちは唖然としていた


……

「あの小僧…油断ならないわね。"センリ"の言った通りだわ…」

去って行くポムの呟きは誰にも聞こえなかった

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