第44話 生徒に教えよう 1

「よーし、お前たちアタシに一撃入れてみな?」

挨拶もろくにしないまま、それぞれの科に分かれ…早速ヌレハが生徒に無茶な注文を入れた

「ヌレハ先生。一撃って、カスっても一撃ですか?」

バナナはオヤツに含まれますか?的な事を言う生徒。茶髪で、見た目も馬鹿そうだ

「カスっても一撃だぞ。ま、カスるどころか、アタシを見失うんじゃねーか?お前ら」

ヌレハが挑発した

「…先生に俺たちの実力を見せつけるぞ」

「「「おおっ!」」」


「威勢だけは一人前か」

ヌレハはニヤリと笑った

「アタシからは攻撃せんし、反撃もせん。だから怪我はしないと思うが…自爆は知らんっ」

ヌレハがいつの間にか、巨大な戦斧を手にしていた。それに気付いた生徒たちは唾を呑む

「なあ…ヤバくないか?」

「「「うん。…死ぬかも」」」

虎の様な威勢はなくなり、子猫になってしまう生徒たち


「ちっ、情けねーな」

ヌレハは溜め息を吐いた



◇◇◇



「それでは槍術の指導を始めます。が、その前に槍について皆さんはどの位知ってますか?」

エリザは目の前の生徒たちに問う

「はいっ!長さも形もいろいろあります」

細長い槍を持った生徒が答えた

「そうですね。剣と同じぐらい、いろいろな形があります。長さも…長いものになると、4、5メートルに及ぶみたいです。ですが、これは普通は使いませんね。…では、矛と槍の大きな違いとは何でしょう?」

エリザの問題が難しくなった


「えっ?!そう言われると…」

「名前が違うだけで同じなんじゃない?」

「見た目が違うくないか?矛って、先がデカくない?」

「そうね。槍と違って弧を描いてるイメージがあるわ」

「あっ?! そうだよっ、突くかなぐ(斬る)かの違いだよっ」

感のいい生徒は気付いたようだ


「正解です。矛の生徒はなぐ(斬る)ことを、槍の生徒は突くことを重視してください。それが1番殺傷力がありますので。

…矛と槍の共通点は何でしょう? ヒントは他の武器と比べてみることです」


「「……」」

「共通点って、言われてもなぁ…」

「見た目もバラバラだしね。…両手で持つ?」

「ばっか。片手でも使うだろ。それに剣も両手剣あるじゃん?」

「あっ、そうか」

「えー、分かんないよ」

「エリザ先生、もう少しヒントください」

活発な女子生徒が『ヒントちょーだい』とねだる


「じゃあ、あなたはそこで槍を構えて立ちなさい。それと…そこの男の子、君が彼女に槍で攻撃しようとしたら…どの辺りからしますか?」

エリザが攻撃の距離を聞く

「…ちょっと近いか…これぐらいかな?」

男の子は、槍の届く範囲で距離をとった


「?!私、分かった!」

「あ、僕もっ」

2人を見てニッコリ微笑むエリザ

「距離ですね。槍も矛も、近距離を好みません。敵と対峙した時は、その距離を保つように心がけて下さい」


生徒たちは『なるほど』と頷いた



◇◇◇



「魔法・魔術の実技の前に…詠唱・略式・無詠唱ってご存知ですか?」

シオンは生徒たちの顔を一通り見渡して聞いた

「詠唱って、決められたすべての言葉を言うんですよね。で、略式は適度に省く。無詠唱は言葉通り、詠唱が無いものですよね?」

そんなの常識ですよ?といいたげに、メガネをクイッとあげる少年。

「じゃあ、詠唱が必要なものは?」

シオンが突っ込んでいく

「えっ?! 魔法はイメージなんですよね?詠唱が必要な奴は、馬鹿なだけじゃないんですか?」

「残念。不正解ですよ。自分よりも格上の存在…例えば精霊から助力してもらう時は、詠唱が必須ですね。自力の場合は、あなたが言うように…馬鹿なだけです」

生徒はみな『なるほど〜』と頷いた


「略式は…そうですね、簡単に言えば端折った感じと言えばいいでしょう。無詠唱はそのままですね。

いずれも必要なのは、名前…呪文名ですね。これは省けません。なぜなら行使する時の、サインみたいなものだからです。精霊も悪魔も等しく、神ですら呪文名を省くことは不可能だと思います」


生徒たちは『神ですら不可能』と聞き、自分らが学ぶ魔法・魔術の奥の深さに驚いた



◇◇◇



「イッキ先生ーっ、何か無いんですか?」

生徒がイッキに催促した。その先生は、さっきから他の授業(配下の話し)を聞いている。


(なるほど、挑発ですか…。確かに効果的かもしれな…いや、これぐらいの年齢だと効果抜群だよっ。それに問題形式にすれば、生徒たちの考える力も上がる…ということですね)

イッキはニヤリと笑う

しかし…さっきのフルチンで、女子のほとんどがボイコットしましたか…残念っ


「よーし、じゃあ僕も授業をするとしよう…

          …先ずは脱げっ!」

"ザワザワ"


「イッキ先生、意味が分かりませんっ」

出来杉君の様な奴が代表して言った

「意味? 一見、意味無さそうな事でも実は…って事あるの知ってる?コレもね意味ある?かもしれないよ」


"ザワザワ・ザワザワ"


「幸い、女子は2人しか居ないし…ほれ、脱いだ脱いだっ」

イッキはそう言うと、自分が率先して服を脱ぐ

「や、やっぱり先生のでけえ…」

「俺もアレぐらいなるかな?」

「なあ…先生も脱いだ事だし、何かあるんじゃね?」

「そうだな。とりあえず脱ぐ…か」

男子生徒たちは仕方なしに服を脱いでいった


「先生〜、ウチらは?」

ケバい方の女生徒が言う

「ん?キミたちは脱がなくてもいいよ。それよりシオンを…シオン先生を呼んできてよ」

お使いを頼んだイッキ

「分かった〜。呼んでくるねっ…あ、ウチはエメリー。で、こっちがキエラ。よろしくねっ先生」

「エメリーにキエラね。よろしく〜」

ケバくても元気な子は好きですよ僕


〜〜〜


シオンに魔法で沼を作ってもらったよ

「はい。それじゃあ全裸のみなさん、泥を体に塗りたくって下さい。…あ、粒子が細かいからヌルヌルしてますが、ローションじゃないんで、目や口に入れないでね」

男子生徒は『ローションて何だ?』と頭を傾げた。

が、キミたちにはまだ早いから気にしなくていいんだよ?


「出来ました」

「先生、俺も出来たぞ」

「俺も」

準備完了したみたいだよ

「うむ。みんな泥んこだね。うけるー」

「でも先生。コレ遊びですよね?」

また出来杉君か…。遊びで間違いないが、なんかムカつくね


「これは遊びではありません。将来、戦術を担当するキミたちですが、下働き…いわゆる下っ端ですよ、最初はね。戦力や物資の運用を考えていく上で、ベテランでもないキミたちは、現場を自分の目でみないと分かりませんよ? 敵が人であれ、モンスターであれ斥候みたいな事もしなければならないかも知れません。分かりますか?」

遊びというのがバレないように頑張った僕


?!

「先生、もしかして気配を断つ授業ですかっ、コレ!」

「ふっふっふ…分かりましたか」

「「「おおっ…すげぇーっ」」」

な訳ないでしょ?こんなんで気配が消えたら苦労しないよね


「と、ここまでは普通です。誰もがやってきた事でしょう。では、これからが本番です。と言っても挿入じゃないからね?チェリーどもっ!」

「「「……」」」


「イッキ先生、ちょいちょい口が悪くなるな…」


チェリーどもに、胡座をかいてもらい座らせたよ

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