第40話 魔法陣

赤色だった魔法陣が反応するかのように、黒に変わっていく

(へー。いい演出だよ、なかなか凝ってるね。集めてるのは欲…それも夢の中からか)

このおっぱいは淫魔の一族かもね。人間かと思ったけど…


「機は熟した。小僧、終いじゃ」

魔法陣から黒いモヤが出たと思ったら、僕だけをモヤが包み込んだ

「死にゆく気分はどうだっ?」

態度も口調もコロコロ変わる。多重人格みたいといえばわかりやすいか。


お姉さんに抱きつかれ、更にモヤがふわふわして…

「もう…射精しそうですっ!」


「えーっ?!」

思っていた反応と違ったのか、お姉さんは慌てる

「ちょっとー、苦しいとか…怖いとか、絶望感とかってないの?」

「いえ、まったくありませんよ?」

……

「これならどうじゃぁあっ」

お姉さんは隠し持ってたナイフで、僕の胸を刺す

「ゴフッ」

口から血を吐く僕

「最初から殺して贄にすれば良かったか」

お姉さんはおっぱいをプルプルさせて、自分の術の完成を喜ぶ

「人間てさ、ナイフで胸を刺されると死んじゃうんだよ?

    …敵と見做していいんだな?」


「?! 貴様っ、何故生きているっ!キズもないではないかっ」

イッキの胸には傷跡が無かった。それどころか刺さったままのナイフは、いつの間にか手に握られていた

「何故生きている…か。お前がソレを知ることは不要だ。…ふむ。コレは呪が掛かっておるな。お前同様に」

イッキから神々しくも禍々しいオーラが洩れている


「貴様は何者だっ?! この "生と死" の神である我を跪かせるとはっ」

「お前、いま "生と死" の神と言ったか?

それは別物だ。兼務することはならん」

「ぐっ?!」

跪いてた女が、突如ゴンっと床に額を落とした

女の綺麗な背中を見下ろすイッキ

「これも呪か。それも邪法…。ヒトが別のモノになるよう施されたか」

山羊の髑髏に、目玉だけが "生きた目"。それも生々しく描かれた刺青

「面も必要ないな」

イッキは左手でパチンと指を鳴らす

背中の刺青は消え、山羊の面も消えた。

そして、ただ美しい1人の女性が横たわっているだけだった



◇◇◇


「こ、ここは…?」

裸のお姉さんが目を覚ます

「ん?気がついたみたいだね。おはようさん」

「お…おはようございます」

キョロキョロしたお姉さんは、自分が裸だと気付き…僕に抱きついた

「あ、ありがとうございました」

だ、大胆な女性だね

「え??お礼を言われるような事してないよ僕。むしろお姉さんの裸が見れて、礼を言う側だよ?」

『得したのは僕だよー』と言ったイッキ。しかし彼女はそれでも離れなかった


「お姉さん、人ではないね?」

なんでいえば分かりやすいかな?混じってる…混ざった? 言い方を変えたら"出来損ない"か。失礼な言葉だけどね

「はい。 …自分はもう人ではありません。かといって、魔族でも悪魔の類でもありませんが…」

自分はもう人ではない?…という事は、前は人間だったということか。魔法…それも、邪術によって変えられた?

「ねえ、話を聞かせてくれるかな?」

事情が知りたいな僕


………

……

「という訳なんですよ…」

記憶は殆どあるが、自分では行動出来なかったと。操られて…いや、それだとおかしいな

「M字オナ…

「すみませんっ。それは自分でやりました!」

…なんとまあ、都合の良い術だこと…。いや待てよ、欲に属する呪なら…あり得るか


「欲のエネルギーを陣に集めて何をする気だったの?」

問題はそこだよね。どうせ、ろくでもない事だとは思うけど…

「負の力を集めて召喚するみたいな?ことを聞かされた覚えがあります」

負の力か…。

「召喚って言ったよね?何を召喚するかまでは知らない…よね?」

「いえ、そこまでは分かりません。私も冒険者でしたから、ある程度は召喚魔法を知ってはいますが…。指示を出した者がそれ以外、語らなかったので推測も出来ません」

ま、そりゃそうか。いちいち言わないだろうし、情報は極秘だろうからね

ん?…極秘?なんで極秘なのに、このおっぱいを使った?


「ねえ、もしかしてキミは死ぬのが前提の任務をもらった?」

「……」

あれだけ良く話してくれてた、おっぱいが黙ってしまった

「ごめんね。辛いだろうけど話してもらうよ?」

僕は心を鬼にする。金棒は股に挟んでおこう

………

……

…です…」

「なるほどね。つまりこのアニアハン王国を潰そうとしてる国が、第一歩としてロマニア領を消そうとしたんだね」

だいぶ話が見えてきたよ。整理してみるね


キングとエリザは私的理由で除外。

ミノタウロスはおそらく、絡んでいる。マルーンを殺る事でヌレハを王都にけしかけようとするも、手に負えなくて放棄。

ロードはたぶん意図していなかったが、棚ボタ的に組み込んだのだろう。あの時の"観られている"感覚はその為だったのか

2度失敗した連中は後戻りが出来ないので、このおっぱいを使って召喚させようと…

こんなところか。


となると、ヌレハが僕を襲わなかったのは何故だ?子供だから?

…分からないね。あとでヌレハに聞いてみるか

ロードの監視者は…放置でいいか。そのうち出会うだろう

この魔法陣、式からすると…欲を集めて、まさか"マモン"を呼び出そうなどとしてないだろうな?一つでも呼び出したら滅ぶよ?

ま、そんな馬鹿はいないか。式も違うし…


「キャァーっ。…ハァハァ…ダメぇー!」

どっ、どうしたね?

「か、体が熱いのーっ。ダメっ!ガマン出来ないっ」

おっぱい姉さんは僕の服を乱暴に脱がして、仰向けの僕に跨った


「えーと、まさかキミは作られたサキュバスなの?」

「ハァハァ…そ、そうよっ」

「違ったら嬉しいけど、もしかしてアスモデウスを信仰してる組織?」

「…良く分かったわね。…ハァハァ…」

「馬鹿っ!キミは直接は関係ないと思うけど、やっぱり馬鹿がいやがったかっ」

やべーな。七大罪の2匹が下手したら出てくるぞコレ


「魔法陣ちげーだろ!アスモデウスを信仰するから、サキュバスの手下…合ってる。シンボルが山羊は…コレも大丈夫。だけど、なんで陣の式が強欲なんだよっ?! 欲は欲でも、色欲だろーがっ!

マモンにしろアスモデウスにしろ、気付かれたら激怒してこの世界に出てくるぞっ!!」

そうなったら終わったね。僕の異世界生活しゅーりょー

「ええっ?! そうなのっ?」

とか言いながら入れようとする。キミね、事の重大さに気付いてないよね?

……

「ま、いっか。出て来たらそん時考えたらいーよね。"据え膳食わぬは男にあらず"だよー」

「やーん。腰動かしちゃダメーっ!」


魔法陣が暗い青紫の光を放つ中、馬鹿は

『ラブホのブラックライトだよねー』とぬかしながら、はしゃいでエッチした

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