第38話 ロベルト12歳、…になる

「ご主人様バッカだなぁ。兄弟揃って出入り禁止になったんだって?」

ヌレハがゲラゲラ笑いながら言った


「兄さんが悪いんだよっ。僕、なにも悪いことしてないのに…。とばっちりだよ!」

プンプン激おこ中のイッキ

「ご主人様?反省のカケラもありませんね?」

エリザの目がつめたい。それもそのはず…先日、街のお風呂屋さんで兄弟仲良く大暴れ。

ロベルトは鼻から大量に出血し、風呂の一部を赤く染めた。

イッキの方は、女性達を片っ端から触りまくり、手が付けれなくなった所でエリザに止められる

そりゃ、エリザも管理人さんも怒るよね


「あたし達は別にかんけーないんだよね? 今度入るときは貸切にしよー?

  あ…出禁だから、違う場所になるかー」

「ナイスっ! それ採用っ」

マルーンに言われ、『おぉ、それだ!』と、馬鹿は思ったに違いない


「ですが、イッキ様。ドコのお風呂を貸切にされますの? この街は彼処しかございませんよ?」

パンジーが『他に風呂屋はねーよ』と主人に伝える

「マジで?」

「本当です」

「…どうにかなら

「なりませんね」


8歳の馬鹿な小僧が『馬鹿やろー』と叫びながら、部屋を飛び出して行く

「ご主人様っ?!」

「エリザほっとけ。そのうち帰ってくるさ」

「イッキ様、家出??」

「まぁ、お気持ちはわかりますけど…」

配下達は主人が出て行った扉を眺めていた



〜〜〜


自室から飛び出した馬鹿は、走りながら考える

「他に風呂屋がないとな?…うん。そだね、パパンに言って混浴を作ってもらおう」

イッキはバルトの部屋に向かった

……


「…という訳だ。これからお前は領主代行とする」

途中からだが、バルトの声が聞こえた

「父上っ、俺にはまだ早過ぎます!」

あの兄さんがパパンに反論? …事件の匂いがするよ


"バーンっ"

「なんじゃーいっ!」

イッキは扉を壊すかの様に開けて、893のお偉いさんみたくドスを効かせた


「おぉ、イッキか。どうかした?」

しらばっくれるパパン。馬鹿め、誤魔化そうなんて3日早いわっ!

「珍しく兄さんが、パパンに反抗してましたよね?まだ早いとか何とか…。 あ!なるほど、分かりましたよ僕。 剥けてもない兄さんの筆下ろしの件ですか。

      …このホーケー野郎めっ!」


「「………」」

「父上っ、俺に内緒でそんな話が進んでいるのですか?!」

ロベルトは水面下で、自分の筆下ろし計画が進んでいると勘違いした

「違う違う。無論、ロベルトの勘違いだが、イッキも勘違いしているぞ?」

バルトが『2人共、誤解だよ?』と言った


「じゃあ…なあに??」

「ですよね、ちちう…

「だまらっしゃい! いま僕がパパンと話をしてる途中でしょーがっ」

イッキがロベルトを黙らせた


「あのねイッキ。ロベルトを領主代行にしようかと話をしてたんだよ」

(ほー。このホーケーでチェリーのロリコン野郎が代行ですか? まだ12歳ですよね?この甘ったれは…

…いや、まてよ?代行どころか、領主にしちゃえば…僕は晴れて自由になるんじゃないか?)


「パパン、ぬるいっ!ぬる過ぎるよっ。

代行と言わず領主にしちゃいなさい!」


「「「?!」」」


「いいですか?確かにこのホーケー野郎は、まだ12歳です。一ミリたりとも剥ける気配すらありません。…が、いずれは剥けるんですよ?ズル剥けになるんです。分かりますか?」


?!

「た、確かにそうだっ!領主の事も同じことかっ」

バルトは悟り、ひとり興奮した

「ま、一生剥けない可能性もあるけどね?」

イッキがさっきと真逆のことを言う


「えー?! それダメじゃん…。よし、ロベルトよ!今すぐ貴様、一皮剥けろっ。ズル剥けになってしまえ!」

バルトはイッキの言葉によって、ロベルトに剥けろと強要する…いや、命令か。


「…無理です」

会話に入れなかったロベルトが、やっと口を開く

「兄さん!領主になろうかという人がっ…その様な甘っちょろい考え方で、どーするんですか?! 手でもハサミでもいいから、脱・ホーケーしなさい!」

熱くなるイッキ。だが、ハサミはあぶないな


「少しよろしいでしょうか?」

ザジが手を挙げた

「なんだ、デジよ」

「旦那様、ザジです」

「ん?そうだっけ爺よ?」

パパンは2文字の名前も覚えられないのか…

「まったく、まだボケるのは早いですよパパン。それと自分の名前なんだから、自分で違うと言った方がいいよ?…チチさん?」


「「「………」」」


ザジはイッキのボケを無視して、話を戻す

「あのですね、ロベルト様が包茎で童貞なのは…置いといて。領主代行か、それとも領主か?どちらにされるかの話しではなかったのですか?」

「ザジ待て。それを置いとくのか?」

ロベルトは何故か子供のクセに、納得いかなかった


「「そうだっけ?」」

馬鹿親子が頭を捻っている

……

「旦那様、この際イッキ様の案でいく…というのは、いかがでございましょう?」

「うーむ…しかしだなぁ…」

沸きらないパパン


「なんかさー、兄さんとザジって…パパンと爺やみたいだよね」


「「「「?!」」」」


この一言が決め手になった



〜〜〜



「それはそうとイッキ。イッキの学園生活がそろそろ始まるよ?…ロマニアにいて大丈夫?」

パパンが思い出したかのように言う

「え?始まる?? 行ってないから不登校だよ僕」

「ごめん。パパ伝え忘れてたけど、来月からなんだ」

おい!それ凄く重要だよ。知らずに行ってたら、『誰コイツ?』になってたよっ!

「まぁ…今となっては行く意味も…

あ!ちょいみんないいかな? 今回のオークの戦いで変な武器か、アイテムを持ってた人いた? 知ってたら教えて欲しんだけど」

きっと手掛かりがあるはずと睨むイッキ


「それがどうかしたのかい? …爺は何か知らないか?」

「旦那様と一緒でございましたし、知りませぬな…」

天幕にいた2人は知らなくても仕方ないか…

「ありがとう爺や」

バドラーはスッとイッキに紅茶を出した


「兄さんとザジさんは知ってる?」

「いや、俺はオークの事でいっぱいだった。だから俺の話しは役に立たないぞ?」

うん。そうかもしれないな

「自分もイッキ殿が言う"変な武器"は見ておりません。全滅してしまった冒険者とは、顔馴染み以上の付き合いですが…その様なことは聞いていませんでした」

「それは遺体の周辺を見たから、僕も無いと思うよ。本隊の近くにいた…生存組みはどう?」

冒険者たちの遺品は僕も確認した。ざっくりと大雑把だったけど、変な…特に呪い系なら気付いたはず。

「生存組みですか?…そうですね…

又聞きになるのですが、1人の冒険者が以前よりずっと強くなったらしいのですが…。関係なさそうですよね?」


…うーん。技術や肉体、そいつ自身が純粋に強くなったのなら関係なさそうだけど…。とりあえず会ってみて、話を聞く価値は…あるかもしれないな


「ザジさん、その人に会いたいのだけど?」

「イッキ殿、それは構いませんが…少し問題がありまして…」

ザジが言い淀む

「問題?怖い人なの?」

「ある意味で怖いかと。頭がちょっとばかり…おかしいみたいです。言動も変という事ですし」

頭がおかしいって…。その人に話を聞きたいんだけど? 僕やっぱりやめ…

「なんだ。それ、イッキじゃねーか…プッ」

ロベルトが突然笑った

……

「あっつ!!」

ロベルトの股間に紅茶をぶっ掛けた

「ごめん。手なんか滑らなかったし、思いっきり狙ったよ」

僕って素直だよね

「イッキ様、そこは『わざとじゃ無いよ』をアピールしませんと」

「爺や、だめだめ。このチェリ兄さんは、言葉で言って分かるほど賢くないから」


「「「た、たしかに」」」

「俺、被害者だよ?誰も味方にならんのか?」


「しかしイッキ。その変な武器か、アイテムを持っている奴が見つかったとして…イッキはどうするつもりなの?」

パパンが『どうするの?ワクワクしちゃうよね』感を出してくる


「あー。それはほらっ、僕の探し物を持っている奴はもちろん…」


「「「「もちろん?」」」」


「殺すよ」

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