第15話 えっと…拾った?
やっぱり馬車は早いね。あっという間に王都に着いたよ
検問もおっさんの知り合いなのか、すんなり通れたし。あとはギルドに行って、無事を伝えてからバレットがいる宿を探そう
「ありがとね。ジェニファーさんと…しょんべん臭いベスっ」
僕たちは先ずギルドに向かうから、2人とはここでお別れだね
「ちょっとひどくな〜い?」
股間が変色した服をアピールするかのように、体をくねらせながらベスが返事する
見せつけてるのか?
「あーん、ちょっと待ってアナタたちっ。いくら王都といっても、丸腰はないわぁ。安物だけど、荷台にある武器をあげるわよん」
マジで?さっすがジェニファーさん。しょんべんオヤジとは出来が違うよね
「ありがとジェニファーさん。エリザ、武器を見てみようよ」
エリザに抱っこされたまま、荷台に行って武器を選ぶ
「エリザは何がいいの?」
ガサゴソと僕は武器を漁る
ナイフ、小剣に片手剣と槍ぐらいか
「私ですか? そうですね…槍が欲しいです」
槍…槍っと。槍を探したら3本あった
全体が短めの槍と、穂が大きめで長い槍。それと、ごくありふれたような槍がある
「好きなの掴んでよ」
「じゃ、じゃあ…」
モジモジしながら、僕の槍を掴むエリザ
「…?」
「?」
互いに首を傾ける
「あっ、違う違う、槍のことだよ」
「ご、ごめんなしゃい…」
慌てて手を離すエリザ
「ふふふっ、おっちょこちょいだなぁ、エリザは」
「ご主人様のいい方が悪かったんですー」
ぷいっと横を向く
「「おーい、2人とも帰っておいでー」」
甘い雰囲気がぶっ壊れた
セリフの出所が、さらに不快にさせる
「私、こちらを貰いますね」
手にした槍は穂が大きめで長いヤツだった
エリザがデカいから、それでも短く感じるな
「イッキくんはどれにするのん?」
ジェニファーが聞いてきた
「今まで武器なんか持ったことないし、かえってジャマになるから要らないよ僕」
自慢じゃないけど、武器を持ったら自分が怪我をする自信はある
「ご主人様に武器は必要ありませんね。私が守りますから。それに…」
よっと、僕を抱え上げるエリザ
「コレは神槍なのですよ?」
股間を撫でながら言った
" "ゴクリっ" "
「おいっ?! おっさん共っ、喉を鳴らすな喉を!」
目付きがやらしい…
肉食獣がエモノを狩るときの目付きだ
「ダメですよ?そんなに欲しがっても。コレは私のです」
いやコレは僕のだよ?
……
…
「じゃ、僕たちはギルドに行くよ」
「分かったわん。今度、お店にも来てねん」
いかがわしい店じゃないでしょうね…?
ちょっと期待しちゃうよ僕
「「またねーん」」
「あいよー」
手を振りながら別れた
……
…
「ご主人様、人間って何種類いるのですか?」
「何種類?」
前の世界でいうところの、白人・黒人・黄色人みたいなことか?
「彼らはオスでしょう?なのに…メスのソレが匂ってきました」
あぁぁ…それね。テンションがだだ下がって、気分が悪くなる
「あれは特殊なの。ごく一部の神に背いた人間さ。オスのオークたちも、アレを好んで狩ってくれないかな?」
「ご主人様、オークが滅びますよ?」
「だよねー」
「エリザって…たぶん強いんだよね?」
今後の行動にも影響しそうだから、聞いてみたよ僕
「ご主人様の足元すら及びませんが…。それなりには…」
僕より弱い?またまたー…
…
そういえば…ブヒブヒ言って、何度もイってたな。途中失神・失禁しとったし
「あ、そっちじゃなくて、戦闘ね?」
「そちらですか。私もクイーンでしたし、国程度なら簡単に滅ぼせますよ?」
そらアカン。僕の異世界が終わってしまう
「エリザ、本気は禁止ね。悪者でも手加減しようよ」
「大丈夫ですよご主人様。私、進化していろいろと分かったんです」
へ?進化?? …人化のことか?
分かった? …何がよ?
「ま、まあ…手加減出来るならいっか」
……
…
ここがギルドかぁ…
随分と建物が大きいな。見上げていると首が痛くなるよ
「エリザ入るよ?」
2人はギルドの扉を開けて中に入った
「たのもー」
「ご主人様、セリフがおかしいです」
「大丈夫、誰も聞いてないみたいだよ?」
ギルドのロビーが騒がしい。人が多いというのもあるが、慌てている者や口論している者が目立つ
「活気があるねー。こうでなくっちゃ」
「ご主人様、様子が少し変ですよ?」
そうなん?ギルドってこんなもんじゃないのかな?
「考え過ぎだって。賑やかなのは、近々でっかいレイドがあるかもしれ
「「「あーっ、イッキ?!」」」
ん?
おぉ、3人娘ではないですか
「や、みんな。元気?」
左手をあげて答える僕
「元気?じゃねーよ。無事だったか…」
涙目のジェシカにギュッと抱きしめられた僕。僕も涙目になる
シスターのクセに胸当てが金属だと?! 顔が痛えよ、顔がっ
「イッキくん、良かったぁ…」
ほっと安堵した顔になったリズ。髪の毛が乱れている…やはり大きな戦いが近いのかもしれない
「ごめんなさいね、イッキくん。わたしは諦めてたけど…よく生き残れたわね?」
マリーが、意味深なことを言った
「えっ?! 死んだの僕?」
「お前、今こうやって生きてるだろっ?!」
金属の胸当てに顔をグリグリするジェシカ
「痛いって、止めろジェシカ! 顔が痛いんだよっ。その胸当てを外せ」
「…うん、そうするっ」
ジェシカは胸当てを外して、また僕をグリグリした
「おっほーっ。やっぱりジェシカのは、適度な弾力があって良いですな」
高反発の枕を思い出したよ僕
「イッキ、どーよ? これなら文句ないだろ?」
ジェシカはニヤニヤして僕に言う
文句どころか褒めてあげ…
「ご主人様?」
「うひっ?!」
「どうしたイッキ?」
ピンポイントでの精神攻撃かっ?!
エリザめっ、オーラに指向性をもたせるとは…やりよるわ
「エリザ待て。これは仲間の挨拶だ」
「仲間ですか?」
「ちょっとイッキ、このでっかくて美人で、やらしい服を着てる女は誰?」
お互いを知らない…そりゃそうか。
「エリザ、この人はジェシカ。左側がリズさんで、最後にマリーさんだよ」
(というか、僕と出会った時に3人居たでしょ?)ヒソヒソ…
「あぁ、そういえば居ましたね。私はエリザ、よろしく」
軽く会釈をするエリザ。おっぱいが弾む
「で…イッキ、おっぱい美人は誰なの?」
ジェシカが僕を睨む
「えっ? 誰って…クイーン
「ご主人様っ」
(人間の敵なのです。伏せられた方がよろしいかと) ヒソヒソ…
そっかー。言われてみれば納得だよ
「何ヒソヒソやってんだ?!」
イラッとするジェシカ。カルシウムが足りてないんじゃないかな?
「カルシウムってね、小魚や牛乳からではなかなか吸収されないんだよ?」
「何情報だよっ?!」
「うーん…。何と言いましょうか…
助けてもらった恩人? いや…助けたから恩人? なのかなぁ…どう思う?」
「ウチらが知るわけないだろっ?!」
「あっ?!クイーン遭遇で、助けてもらったのね?」
お?ナイスだマリー。それに乗っかろう
「そう、それっ。それですよ。 そこで助けてもらったというか、命を助けてあげたから懐かれまして…。えっと…拾ったみたいな?そんな感じでどうでしょうね?」
「んー、何か納得できないな」
とジェシカが返事をする
「でもでも、よくクイーンから逃げられたよね?」
リズが疑いの目で見てくる
「あぁ、あれね。かなり弱かったよ? 3、4回突いたら白目むいて失神するし…上も下も口からよだれ垂らすし…」
「ごっ、ご主人様恥ずかしいですぅ…」
袖をクイクイ引っ張ってエリザが抗議する
「「「「弱い?!クイーンが?!」」」」
おや?知らないおじさんまで話に入ってきたぞ。少しまずいか…
「いや、あれはクイーンじゃなかったよ?」
周りが僕をジッと見る。だから、クイーンじゃないと言ってみたよ僕
「いや、あれはクイーンだった」
「そうね…白毛のオークで雌ならクイーンで間違いないと思います」
「イッキくん、仮にクイーンじゃなければアレは何だったのかな?」
この3人娘めっ!返答に困るツッコミをしてきおってから
「えっと、えっと…。特殊な個体? んーとね、あっ?!そうだ。雑貨屋にジェニファーとベス…いや、エリザベスがいるじゃない?
オークにも似たような性癖の個体がいたんだよ」
人間にもいるんだから、オークにもいるよね?
(いませんよご主人様)
「そっか。アレはアッチのオークだったのか」
とジェシカ
「なんだよジェシカ、驚かせやがって…死ぬかと思ったぞ?」
知らないおじさんが言う
「そうね…イッキくんも、彼女も助かった訳だからクイーンじゃありえないわよね」
リズからの疑いもはれたようだ
「みなさーん、すみません。クイーンは間違いでした。本当にごめんなさい」
マリーがみんなに謝った
「「「な、なんだ…違ったのか」」」
「お前たち、助かったんだぞ? もっと喜べよ?それとジェシカ、情報は正確にするように」
偉そうなおっさんが締める
(ご主人様、あのような珍種は人間だけですよ?)ヒソヒソ
(やっぱり?)ボソリ
(オーク族はもとより、他の種族にもいないと思います)ヒソヒソ
人間って特殊だよね
「それでは今回の誤報のペナルティーとして、シルバーブレットには1週間の雑用を命じる…」
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