第35話寝ぼけてる……のか?天然なのか?
場所は俺の部屋。なのに俺は正座をしていて、俺の前に立っているのは俺の妹である日和だ。
なぜこの状況になってしまったのだろうか。別に俺は悪いことはしていないのに……。
ただ先輩を、寝やすいように方向を正してあげただけなのに……。
「にいに。この世にはねしていいこととねしちゃダメなことがあるんだよ?そのしちゃダメなことをにいにはその女の人にしてたよね」
「いえ、断じてしていません」
「してたでしょ」
「ほんとのほんとにしてないから!!」
この世の冤罪というのはこうやって起こっていくものなのか……。悲しい社会だ。
「にいに。じゃあその人になにをしようとしてたの?そもそもなんでその人は男の部屋で寝てるの?」
「お、俺はただ寝づらそうだなと思って、寝る方向を直してあげただけです……。七海先輩が寝たのは、ただ眠かったからじゃないかな?」
「それはほんと?」
日和が俺のことをじっと凝視しながら言ってくる。俺は嘘は言ってないのでやましいことは何もない。ただちょっとした感触が懐かしいだけで……。
「ほんとだよ」
すると日和は視線を俺から外し、七海先輩に向けたかと思うと――
「なによこのビッチ!!異性の部屋で寝るとかただの変態のすることよ!あたし
だってにいにの部屋で――じゃなくて、場をわきまえなさい!この変態女!!」
七海先輩にとんでもない罵詈雑言を投げかける日和。まるで止まることを知らない獣のようで、少し怖いように俺の目には映った。
でも、七海先輩は先輩で全く起きる気配がない。
どれだけ熟睡してるんだあの人……。
「日和?わかったから一旦落ち着いて?」
俺がそう言うと日和は口を閉じ、肩で息をしながら、この部屋を出ていった。
嵐のようだったな……。
先輩は相変わらず静かな寝息を立てている。
ここまでくるとさすがに疑問を抱いてしまう。先輩……起きてないの?
さすがにあんな大きな声で日和が怒鳴っていたら、誰でも起きるはずだよな。
俺は少し七海先輩との距離を詰めてベッドに腰掛ける。
そして彼女のほっぺをつついてみる。
「ん、んむぅ」
かわいいなおい。
これだけじゃあ分からないから、首筋をくすぐってみる。
すると七海先輩に体が少しぴくっとした。
我慢しているのだろうか。もう少しだけくすぐりを続けてみる。
「――っ。んっ。あははは!!やめてよ凪くん!!くすぐったいでしょ!」
「七海先輩?起きてませんでした?」
「……?起きてないよ?」
「俺の妹が怒鳴ってたんですけど……?」
「え?そうなの?気が付かなかった~」
気が付かなかった~って……。なんて言われてたかは絶対言わない方がいいな。
「あと先輩」
「ん?どうしたの?」
「ここで寝ないでください!!!」
少しだけ怒った俺の空気を感じ取ったのか、七海先輩はシュンとしてその少しだけ切れ長の目を申しなさげに俺に向けてきた。
そんな先輩を見ていると、俺が悪いような気がしてきてしまってくる。
「そ、その、もうしなければいいんですよ?」
「うん。でも、ごめんね」
先輩の落ち込んだ表情が俺の罪悪感を大きくしていく。なんだか俺が悪いみたいじゃないか。
「わかりましたから、本読みましょう?」
「うん。でもちょっとまだ眠いな……」
「えぇ……」
「床で寝かせてもらってもいい?」
「ここでってベッドで意味じゃないです!!」
「え?じゃあどういうこと……?」
先輩は困惑した表情を隠せておらず、本当に何のことかわかってないみたいだ。
「男の部屋で寝ないでくださいってことです……?」
すると一瞬の沈黙がよぎったがすぐに七海先輩が口を開いた。
「じゃあ、リビング借りていい?」
そういうことじゃなぁい……。
結局ベッドを使ってもらいました……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます