第7話 緊急ミーティング

 昨日は結局、楽器屋さんに寄れなかった。

 

 本楽の目的は果たせなかったが、色々あった。


 昨日の出来事を整理すると……。


 詩織さんにハイキックをくらう。

 警察署で母さんにばったり会う。

 窪田家とランチに行く。

 学さんの音楽事務所と契約が決まる。

 詩織さんとセッションする。

 詩織さんからバンドへの加入打診があった。


 なんか抜けている気もするけど大体こんな感じだ。




「おはよう鳴」


 朝、いつもの待ち合わせ場所にいくと……。


「おはよう鳴くん!」


 詩織さんも一緒だった。


 また少し、衣織と2人きりの時間が減った。


「おはよう師匠、衣織さん」「おはようございます」


 しばらく歩くといつものように時枝と穂奈美も合流した。


「おはよう……って……誰ちゃん?」


 誰とも分からず、とりあえず挨拶を交わす詩織さん。同じ姉妹でも全然ノリがちがう。


「あ、はじめまして時枝です。どちら様で?」


 ノリ的には時枝も中々アレな感じなのだが、詩織さんと比べると随分まともに感じてしまう。


「私の姉の詩織よ、3年生」


「「え——っ!」」


 驚く2人。


「衣織さん……お姉さんいたんですね……言われてみれば……似てる!」


「うん、似てる」


「お姉ちゃん、彼女たちが『織りなす音』のベースとドラム」


「時枝です」「穂奈美です」


「「よろしくお願いします」」


 いかにもリズム隊らしい、息のあった挨拶だ。


「えへへ、よろしくね2人とも」


 そして、早速僕は2人に、今日大事な話しがあるから、部活は休んで今日は緊急ミーティングだと伝えた。


 2人とも気になるから今話してと詰め寄ってきたが、衣織がうまく取り繕ってくれた。


 放課後に大事にな話があるって、朝一番に話されると、僕なら気になって一日中そわそわしてしまう。




 ——そんな僕も……ホームルームで昼休みに職員室に来るように言われた。

 

 なんでだろう……心当たりがない。


 結局僕も、職員室への呼び出しが気になって、午前中はそわそわして過ごすことになった。

 

 そんなもんでランチは一緒にできないと、衣織にメッセージを入れておいた。


 今朝の時枝と穂奈美のテンションだと、昼休みも質問攻めにあうと覚悟していたのだけど、僕的には助かった。2人のことは衣織に任せておけば大丈夫だろう。




 ——そして、昼休み職員室に行くと詩織さんの姿があった。


「あれ? 詩織さん」


「鳴くん、やっほー」


「ん、2人は知り合いか?」


「はい」「妹の彼氏だもん」


 ……先生になんてことを……。


「窪田衣織と音無が付き合ってるのは、噂じゃ無かったんだな」


「は……はい」


「ま、目立つことはするなよ!」


 理解のある先生で助かる。


「2人とも付いてきてくれ」


 僕と詩織さんは、そのまま校長室まで案内された。


 何事かと思っていたら、ひったくり犯の逮捕に協力した事による感謝状が警察から、お礼状が被害者から学校宛に届いていたのだ。


 何か忘れていたと思っていたのはこれだった。もしかしてハイキックを食らった影響だろうか……白のパンツは鮮明に覚えているのに。


 しかし、昨日の今日なのに仕事が早い。


 びびって損した。


 今度、全校集会でこの事を紹介するから、その時はよろしくとのことだった。




 ——そしていよいよ、今日のメインイベント『織りなす音』緊急ミーティングだ。


 詩織さんの件から話すか、事務所の件から話すが考えていると……。


「あれ、なんで詩織さんも一緒なんですか?」


 時枝からごもっともなツッコミが入った。


「楽しそうだから私もバンドにいれて欲しいの!」


 そしてご本人から超ストレートに一つ目の議題がぶっこまれた。


「パートはなんすか?」


 時枝がいきなり食いついた。


「ピアノよ」


「「ピアノ?」」


「そうピアノ! 『織りなす音』にキーボードは合わないと思うけど、きっとピアノなら合うよ!」


 確かに僕もそう思う。


「分かりました、加入の件オーケーです」「私も」


「わーい!」


 2人はあっさり詩織さんの加入を認めてしまった。


「え、本当にいいの?」


 あまりにもあっさり過ぎたので、もう一度確認した。


「だって、師匠と衣織さんが認めてるのなら間違いないっしょ。練習楽しみにしてます」


「うんうん」


 僕が思っているより、僕の信頼は厚いようだ。


「緊急ミーティングっていうぐらいだから……話しって、それだけじゃないですよね?」


 メンバーの加入って結構重要な話しだと思うのだけれど……。


「実はそうなの……」


 衣織もその認識?!


 衣織から目配せされた、僕から話せということだ。


「時枝、穂奈美……落ち着いて聞いて欲しい」


 固唾をのんで頷くふたり。


「実は、『織りなす音』の事務所が決まった」


「「へ」」


「実はさ……僕の母親と衣織のご両親が揃ってるときに、プロを目指すことを報告したら……そうなっちゃったんだ」





「「……」」





「時枝? 穂奈美?」


 この後2人は事態を飲み込めず、しばらくフリーズしていた。



 ————————


 【あとがき】


 まあそうなりますよね(笑)


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