第5話 プロ目指します宣言
とりあえずパトカーで駅まで送ってもらった。何故か母さんも一緒に。
駅では置き去りにされた荷物と
「あれ鳴、お姉ちゃん、
予想外の組み合わせに驚きを隠せない衣織。詩織さんは母さんのことを『音無のおばさん』と呼んでいたが衣織は母さんのことを名前で呼んでいる。いつのまにそんなに仲良くなったのか僕には謎だ。
「ただいま衣織!」
「なんで、お姉ちゃんと鳴が?」
「うんとね、私が鳴くんにハイキックしちゃってパトカーで警察署に行って音無のお姉さんと会ったの」
「えっ、えっ、えっ、何があったの?」
戸惑う衣織。
肝心の説明が全部ぬけているから、詩織さんがただ僕に暴行を加えて捕まったみたいだ。
詩織さんに任せると、時間がかかりそうだったので、僕が皆さんに事情を説明した。
そして、せっかく集まったんだからということで、ランチをご一緒する事になった。
「ただいま!」
『『おかえり』』
詩織さんは……なんと、ドイツにピアノ留学していたらしい。衣織のひとつ上で僕たちと同じ学園の3年だ。
父の
——それはそれとして……衣織のご両親にうちの母さん。
主役の詩織さんには申し訳ないけど『織りなす音』メジャー挑戦、ここで話しとくべきだと僕は考えていた。
すると、テーブルの下で衣織が手を繋いできた。
これは……以心伝心ってやつだ。僕と衣織は顔を見合わせて頷いた。
そして、会話が途切れたタイミングで、僕は切り出した。
「あの、皆さんにお話しかあります」
衣織が、握る手に力を込める。
「僕と衣織……メジャーデビューを目指します!」
「その答えまってたよ!」
真っ先に声を上げたのは学さんだった。
つか、待ってたってどう言うこと?
「鳴くん、ついにその気になったんだね! おめでとう」
あれ、おめでとうってどう言うこと?
「ウチの事務所以外と契約するのは許さないからね!」
「「え」」
驚いたのは僕と衣織だけで、皆んな普通だった。因みに詩織さんは我関せずって感じで、ひたすら料理をがっついていた。詩織さん……超スレンダーなのにどこに入ってるのだろう。
「実は、佳織とも君のご両親とも相談済みだったんだ。君たちが、決意したらウチの事務所に入れようって」
それってなんか……コネ使ったみたいで……ちょっと水を差された気分だ。
「鳴くん、これはコネでも何でもないよ、君たちの実力であり運命だよ」
僕の気持ちを見透かすように、学さんが諭してくれた。
「実はね、君たちが軽音フェスで、優勝した後、僕のところにいくつかオファーがあったんだよ。全部断ったけど」
「「ええっ!」」
そんなの初耳だ。
「君たちに1番最初に目をつけたのは僕だよ! うちの事務所以外あり得ないでしょ!」
「私そんな話し聞いてないけど!」
「だってパパもビジネスだもん。有望な新人を見つけたら自分の会社に入れたくなるのは普通でしょ」
学さんの言うことはもっともだ。
才能のある新人を発掘したら自社の所属アーティストとするのは、ごく自然なことだ。
しかし、それほどまでに、僕たちは評価されていたのか……。
「正直ね衣織が1年の時の学園祭のときは、まあ、いかにも学園のアイドルだなって程度だったんだ」
「え、パパ見に来てたの!」
「でも、今年の学園祭は違った……」
え……学さん見に来てたんだ……僕女装だったのに。
「衣織と鳴くんが出会ったのは運命だよ。きっと2人が出会わなかったらここまでには、ならなかったと思う。本当にすごかった……僕は震えが止まらなかったよ……君たちの織りなす音が、僕の心を掴んで離さない」
なんか……プロ目指します宣言が、とんでもない方向に話が進んでしまった。
時枝と穂奈美になんて説明しよう。
「はい、はい、はい、はい、はーい!」
今まで食事に夢中だった詩織さんがいきなり会話に入ってきた。お皿は空っぽだった。全部平らげたみたいだ。本当にどこ入ってるんだろう。
「衣織と鳴くんってそんなに凄いの?」
「ああ、凄いぞ!」
「じゃぁ早く家に帰ってセッションしよ!」
「いいね! よし、早く帰ろう!」
僕ギター持ってきてないんだけど……つか弦買いに来たら、所属事務所が決まって、セッションすることになったって……いったい何なんだろう。
本当に僕に骨休めなんてなかった。
————————
【あとがき】
事務所が決まるとメジャーデビューは別物です!
なのでまだメジャーへの道は続きます!
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