第十二の屍

 「…すまない、店主。先程の件だが、取りやめることになった」

 ちょうど日付が変わった頃、フードを目深まぶかにかぶったロンド公爵が店に戻ってきた。

 「あら、どうかされました?」

 「…つい先ほど第二王子が亡くなった。この話はまだ世間には公開されていない」

 ちっ。

 「…どうかなされたか?舌打ち…のように聞こえたが」

 「まさかまさか、私はそんなことしませんとも」

 ※しました、それはもう盛大に。

 「それもそうか。どうやら第二王子の件が相当こたえているらしい」

 「あらあら、それはいけませんね。ロンド公爵まで倒れたりしたとあっては問題ですよ。…そうだ、こちらのお守り、お代はいいのでどうぞお持ちください。お得意様の安全は私の願うところでもありますので」

 「…そうか、素直に受け取っておこう。今日はもう寝るとするよ」

 ありがとう。そういってロンド公爵が立ち去ると、かわりに一匹のネズミが店主に走り寄ってきました。

 そのネズミと店主の姿が大きくゆがんだかと思うと、ネズミは店主に、店主は人型の屍に姿を変えました。そして店主はその屍に優しく声を掛けます。

 「ご苦労様でした。幻術士のコニー。あとは収穫を待ちましょう」

 くすくす。

 

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