嘘と少年

なるこ葉

第1話

嘘と少年


ぼく、しらない。

目の前にはママの大事なかびんがばらばらになってる。ままはぼくに何回も聞いた。

あなたが割ったの?

ぼくは何度もしらないといった。

そのたびになぜか胸がきゅーっとして、息が苦しくなった。

だって、ぼくがやったってばれたら怒られるんだもん。怒ったママ、怖いんだもん。きらいだもん。

ママはそっか、と言ってかびんをかたづけた。ぼくはほっとして、外に遊びに行った。

それでもまだ息は苦しくて、ママのことばかり考えちゃった。

ママ、悲しそうだったな。ごめんなさい、しなきゃいけないけど、いったら怒られちゃう。それはやだ。

遊んでも楽しくないな。帰ろう。

帰っておやつ食べよ。

ぼくは家に帰って、テーブルの上にあるドーナツを手に取ろうとした。

あれ?誰かかじってる!ぼくのなのに!!

ママ!ぼくのドーナツだれかたべた!

泣きそうになりながら、ママの背中を叩くと、ママのお口まわりにはドーナツのチョコがついていた。

ママが食べた!ぼくのなのに!

涙があふれて、ぼくはママを叩いた。

ママ食べてないよ?知らない

絶対ママだもん!!うそつき!

ぼくは悲しくて悲しくて暴れた

ママは笑って、そう、ママはうそつき。うそつかれたら、悲しいよね

と言って、ぼくをだっこした。

じゃあ、ママも?ママもこんなに悲しかった?

ぼくはママをぎゅーっとして、ごめんなさいした。ママはぼくをなぜて、ママもごめんね、と言った。

そのあと、2人で新しいかびんとドーナツを買いに行った。ぼくのうそつきはママは知ってたみたい。

ぼくが次の嘘をつくのは、まだまだ先の話

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嘘と少年 なるこ葉 @mandr

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る