雪を溶く熱
一視信乃
chapter.1 美冬と秋人
幼なじみのアキ──
澄み切った高い空と、色付き始めた木々たちと、
「いてっ!」
「アキっ? どうかした?」
「なんか目にゴミが入った。スゲー、チクチクする」
ゴシゴシと目元を
「んー、よく見えねーなぁ……」
首を曲げ、さらに顔を寄せたとたん──ドンッと思い切り突き飛ばされた。
とっさのことに、バランス崩して尻餅ついて、驚き見上げたアキの顔は、逆光になってよく見えない。
「あき……?」
「ゴメン、帰る」
そう短くいい捨てて、走り去ってくアキの背を、ひとり置いてけぼりのオレは、ただ呆然と見送るばかり。
そして、その翌日から、アキはオレを避けるようになった。
けして目を合わそうとはせず、話しかけてもすぐ逃げる。
他のヤツにはフツーなのに、オレにだけずっとそんな感じで、そのまま2年生になり、一緒だったクラスが替わると、同時に縁もふっつり切れた。
長い付き合いだったのに、終わるときは呆気ない。
2年になったアキは、うらやましいほど背が伸びて、イケメン度が上がったと、女子から騒がれる存在となった。
さらには美人で有名な上級生・
今年3年になって、また同じクラスになったけど、なんかもう近寄り難くて、今現在に
「──というわけだ」
「なるほどねぇ。それで、
オレの長い思い出話を、ずっと黙って聞いてた
「は? アナ雪?」
「──の元になったアンデルセン童話。読んだことない?」
「ない」
「面白いから読んでみろよ。山賊の娘がスゲーいいから」
自称・文学少年の佐藤
「つーか俺、あんな怖い顔で
ついさっきまで、佐藤の席でお喋りしてたが、あとから登校してきたアキに、無言でギロリと睨まれた。
アキと佐藤は席が前後してるから、オレが目障りだったんだろう。
それでオレらは廊下へ出て、アキとのことを打ち明けたんだ。
「まあそうだけど、アキが睨んでたのはオレなんだし、そんな気にすんなって。それよか佐藤、進路どうする?」
「あー聞きたくない、その話っ。まだ考え中だよ。そういう黒羽は?」
「オレは別に、隣でいいや。電車通学とかマジめんどいし」
うちの中学の隣にある高校は、お世辞にも賢いとはいえないというか、むしろ下から数えた方が早いというレベルだが、とにかく近いし、たいして勉強しなくても入れそうなところもいい。
「いいのかよ、そんなんで。西園寺はやっぱ
「知らねーよ」
アキなんて、どこへ行こうが知ったこっちゃねぇ。
窓から見える、春の色とは裏腹に、オレの心は
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