03 私、やらかした……?

 メイドAさんがお父様を呼んでくるまで本当に地獄だった。そーっとドアを閉じた瞬間メイドさん達の声が聞こえてきて……。しかも内容は全部丸聞こえ。おーい私はドアのそばにいるんだぞ。聞き耳たてられてますよ。


「お嬢様がお目覚めになられたらしいわよ。どうする?花瓶とか壺は全て隠さなきゃ……いけないよねぇ」


 え、なんで?私別に花瓶とか嫌いじゃないし、むしろ好きなほうだよ。隠さないでよ。


「そうよねぇ、なんせお嬢様、見た花瓶や壺を割る癖が、ねぇ?」


 ちょっと待って!私花瓶なんて割る気なんて無いから!それにどんな癖だよ、最悪じゃん。しかも金持ちの物割った瞬間死ぬ。確実に殺される。あ、私その金持ちの娘だったわ。なら、いいのか……?いや、かんっぜんにアウト。物割っちゃだめ、ゼッタイ。


「てか二人とも!それはまだましな方じゃん!この間なんて私が厨房でお手伝いしてた時、お嬢様がクッキーを作ろうとしたら、コンロ壊しちゃったからね?!コンロが爆発するの初めて見たよ」


「あー、旦那様含め皆料理が壊滅的だからね~」


 ちょいちょいちょいちょい。コンロって爆発するの?!いやほんとカイリーンちゃん最高。日本にいたら友達になってたね。料理は絶対させないけど。ん?まてよ……カイリーンちゃんの尻拭いするの全部私じゃん?!まじかー。ごめん、友達って言ってたの却下ね。無効よ無効。


 と、とりあえず信頼回復しなきゃヤバいね。うん、ちょっと謝ってきます。


「メイドさん達、よく覚えてないけど迷惑かけてすみませんでしたぁあ!」


「きゃあ!!」


「お嬢様?!」


「お顔をお上げください!」


 勢いよくドアを開け、私は人生初のスライディング土下座をした。膝痛い。絶対擦りむいたな。ちぇ、土下座プロへの道は遠い、遠すぎるよ……


「カイリーン?!一体何してるんだい?!」


「お嬢様、お気を確かに!」


「「……」」

 

 ちょうどお父様とメイドAさんがやってきたっぽい。ちらっと顔を上げると3人のメイドさんの顔が真っ青になってるじゃん。お父様ってそんなに怖がられてるんだ。なら空気読んでよ、お父様……


「カイリーン、立ってくれるかな?寝巻きが汚れちゃうよ?」


 あ、そっか。この寝巻き高いんだった。嘘、私弁償とかするお金ない……。サァーッと血の気が引いていく。急いで立ち上がりお父様に向かってジャンピング土下座をした。


「お父様、すみません!汚れてしまった寝巻きはきちんと弁償するので、どうか、どうかお許しください!」


 さっき擦りむいた膝に、さらに打撲が加わった。待って、予想以上に土下座コンボ痛い。よしこれは封印だね。うん。土下座―ズよすまん、清く眠っていてくれ。


「……カイリーン、先ほどから見苦しいですよ。お父様が困っているじゃないですか。それから淑女たるもの床にうずくまってはいけません」


 再び顔を上げたら、めっちゃ美しいお方がお父様の目の前にいた。銀髪のロングヘアがサラサラしてるし紫の瞳も吸い込まれるように目がひきつけられる。これがこの世界の女優さんレベルの美しさか。私なんか月とすっぽんじゃん……急いで立ち上がって自分の髪をとく。あ、絡まり見っけ。


「本当、お見苦しい姿をお見せしましたすみません……ところで、あの……どちら様ですか?」


 いや、うん。めっちゃ綺麗で高貴なお方っていうのは分かったけど、誰?もしや王女様?ってことはお客さんかぁ。恥ずかしいとこ見せちゃったな。


「カイリーン、僕の妻で君の母だよ……」


 やばい開いた口が閉じない。母……おかん……おっかぁ……


「おかぁっつぁーん?!」


 私の驚愕に満ちた叫び声と共に綺麗な銀髪が宙に舞いながらお母様が気絶した。いや、あの、すみません……。それからお父様ナイスキャッチです。お母様にこぶが出来なくて良かったよ、うん。

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