第41話 日本との外交戦!開幕!
一週間後。パシク国の空港に降り立った日本外交官、黒田義友は、今日の会談に人生を賭けていた。
先日起こった、ハワイ行き日本旅客機のハイジャック事件。
乗客乗務員は避難に成功するも、ただ一人、高校二年生の高橋翔太少年だけが逃げ遅れ、拉致被害者となっている。
だからこそ、今回の会談は吉報だった。
——この会談で、必ずや高橋少年を救い出す。その功績を引っ提げ、私は次の選挙で政界入りを果たすのだ。そしてゆくゆくは、外務大臣の椅子に!
自身の輝かしい未来を夢想しながら、黒田はオウカ政権の非道ぶりに期待した。
敵はできるだけ極悪で、高橋少年はできるだけ苦しんでいたほうが、自分の功績が引き立つ。
地獄の人質生活から無辜の民を救い出した正義のヒーロー黒田義友。
そうでなくては困る。
数人の部下と共に、パシク国の宮廷に足を踏み入れ、会議室に通された。
部屋には、パシク国の報道陣と思われる人々が詰めかけていて、フラッシュを浴びせられた。
——この記者たちを利用して今日のことをプロパガンダにしようという腹か。情報戦ができるなら、なるほど、テロリスト共は案外、馬鹿ではないらしい。
黒田は、ステレオタイプのエリートだった。
一流の高校、大学、大学院を優秀な成績で入学、卒業し、外交官になった。
そのせいか、模範的なモノを尊び、それを理想とする性格になった。
より社会的地位、学歴、年収の高いことを良しとした。
黒田からすれば、発展途上国もその国民も見下す対象であり、テロリストなどという犯罪者は、もっとも毛嫌いする人種だった。
上から目線に、せいぜい私の出世の役に立てよと、そんな風にすら思った。
そして、黒田がほくそ笑んだ瞬間、部屋の、反対側のドアが開いた。
「遅れてすいません。パシク国外務大臣、高橋翔太です」
「……………………………………………………え?」
黒田は眼をこすった。そして翔太のことを見つめなおし、部下に尋ねた。
「え、あれ? あれって拉致被害者だよな?」
「はい、そう見えますね」
「あの、もう一度名前を」
「高橋翔太です」
黒田は、引き攣る頬を押さえられなかった。わけがわからない。
「あのぉ、君って、拉致被害者の子だよね?」
「あ、実はあれから色々ありまして、いま俺、パシク国の農林水産大臣と環境大臣と経済産業大臣と外務大臣を兼任しているんです」
「なにがどうしたらそうなるの!?」
「色々あったんです!」
「ッッ……わけがわからない……」
ハンマーで頭を殴られたようなショックに、黒田が眩暈を覚えると、さらに部屋のドアが開いた。
「よく来てくれたな。パシク国大統領、高橋オウカだ」
「初めまして、パシク国第一王女、高橋ミイネです」
ハリウッド女優も真っ青の超絶美女が、スーツをはち切らんばかりの爆乳を揺らしながら入室、続けて、金髪碧眼の美少女が、王族然としたロイヤルオーラをまといながら登場。
——というか、ミイネ王女? 確か、テロリストはクーデターで王政府を打倒したと聞いていたが!? それに高橋? 何がどうなっている?
驚愕の連続で黒田の思考回路がフリーズしている間に、パシク陣営は次々入室してくる。
「秘書の高橋ナナミです」
「護衛の高橋カナであります」
小柄で可愛い桃髪金眼の巨乳美少女に、銀髪ポニテで紫眼の眼帯美少女まで現れて、ドアの向こう、廊下には、負けず劣らずの美少女たちが、ズラリと並んで控えていた。
——もう何がなんだかわからない!
黒田の中で、数十年間積み上げてきた常識が砕け散った。
◆
外交官の黒田さんとの交渉は、順調に進んだ。
最初は、外交官なんてお偉いさん相手にちゃんと喋れるか不安だったけど、話してみればただのおっさんだった。
さっきから黒田さんは、動揺しっぱなしだ。
「黒田さん、日本がODAをするのは、資源や食料を輸入に頼っている日本にとって、海外を支援することは日本の安定につながるからですよね。幸い、パシクには鉱脈が多く、日本の掘削機を使えば日本に地下資源を安定供給する国が増えることになります。日本による鉱床の調査と掘削設備の援助は、将来日本のためになります」
「ふむ、確かに」
「また、援助していただいた資金は全て日本企業への支払いに使うことを条件に、5兆円の無償資金協力をお願いします」
「5兆円、それは難しいですね。上層部を説得できませんよ」
黒田さんは難色を示すも、俺は譲らない。
「そうでしょうか。5兆円はすべて日本企業からの買い入れや工事費用に使います。これは日本市場へ金をバラまく良い機会ではありませんか? 我々は各種農業機械や遠洋漁船を欲しています。円高で日本の輸出が落ち込み、冷え込む自動車メーカーや造船メーカーを潤わせるチャンスですよ? 建設業界も、新国立競技場を始めとする東京オリンピック案件の終了で人手が余り、仕事不足なのではありませんか?」
「それは……」
——よし、畳みかけるチャンスだ。
俺は、異世界転移主人公になり切って、饒舌に追い詰める。
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本日から
【ダサメンの俺が勇者で魔王の眷属? 聖剣を使って彼女を魔王ロードに導きます!】の投稿をはじめます。
舞台は学園異能バトルですがジャンルはセクシーラブコメ。
女の子好きの主人公が、魔王候補ヒロインの眷属として召喚されてから聖剣に選ばれ、大活躍。
一方で、ヒロインや主人公のことを馬鹿にしていた名門魔王候補たちは活躍の場を奪われていく。という話です。
どうぞご一読ください。
また【冒険者ギルドを追放された俺が闘技場に転職したら中学時代の同級生を全員見返した】もよろしくお願いします。
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