聖女の腕力は最強です!~転生聖女による、異世界・世紀末救世主伝説~

あけちともあき

第1話 聖女、大地に立つ

 時は異世界世紀末。

 世界は古代文明兵器の炎に包まれた!


 こうして世界は絶滅したかに思われた。


 だが……人類は生き残っていた……!


「ヒャッハー!!」


 モヒカン、スキンヘッド、ヒゲ、3パターンの顔をしたマッチョな男達が、魔導バイクを駆って荒野を走る。

 彼らが追うのは、一台の馬車だ。


「ヒ、ヒィーッ!」


 馬を走らせるのは年老いた男。

 商人であり、この先にある村に食料を届けねばという使命を負っていた。

 だが、運悪く彼は奴らに見つかってしまったのだ……!


 ポーカー四天王率いる、カード同盟。

 この周辺一帯を暴力で治める、この時代にはありふれた盗賊団だ。


「待ちやがれェーッ!!」


 カード同盟の一団。

 先頭には、クローバーの入れ墨を片目に入れた巨漢がいる。

 魔導バイクを操作しながら、巨漢は巨大なクロスボウを取り出した。


「待たねえってんなら、殺すだけだァーッ!! ヒャァーッ!」


 奇声を上げながら、クロスボウを放つ……!

 一見して適当に撃ったように見えるが、その射撃は的確。


 矢は一撃で馬の尻に当たり、馬車はその動きを乱した。

 馬が立ち上がり、倒れ伏す。

 毒の塗られた矢だったのだ!


「ヒィーッ!」


 年老いた男は外に投げ出された。

 馬車も横倒しになり、中に積まれた食料がぶちまけられる。


 食料とともに、一人の少女が馬車の外に転がり落ちた。

 まだ年端もいかない娘だ。


「ヒャハハハハーッ!! 食料だ、食料だぞてめえらー!!」


「ウワーッ! さすがお頭だーっ!」


「クローバーのキング様!!」


「馬も倒れてますぜ!」


「馬刺しだァーッ!!」


「ヒャッハー! 俺は馬の調理免許を持ってるぜぇーッ!!」


 なんたる無法。

 なんたる暴虐!

 これが、世紀末と呼ばれた異世界の現実であった。


 強いものが勝ち、弱いものはただただ搾取される。


「う、うぐぐ……」


「おじいちゃん!」


 少女が、倒れた老人に駆け寄る。


「ああ、村に、村に届ける食料が……!」


 ならず者達が食料を掴み、むさぼっている。

 食べ物で遊ぶものまでいる。


「や、やめてーっ! それは村のみんなのものなのーっ!」


 少女は勇気を振り絞り、叫んだ。


「や、やめるんじゃミーナ! あやつらの注意を惹いては……」


「ああーん?」


 クローバーのタトゥーの男が立ち上がった。

 身長は恐らく、2mに近い。

 だが威圧感のせいか、5mくらいに見える。


「ヒッ」


 クローバーのキング。

 ポーカー四天王の一人であり、類まれな射撃の術を使う。

 かつてはとある王国の騎士だったのだが、身を持ち崩して今は山賊なのだ。


 その品性、下劣……!


「お嬢ちゃん、随分勇気があるねえー」


「や、やめて……。食べ物は、村のみんなの……」


 少女、ミーナはぶるぶる震えながら、しかし気丈にクローバーを見つめた。

 クローバーが巨体をかがめ、少女に顔を近づけてくる。


「オホォーッ! 偉い偉い……! だが、こうされても立派な口がきけるかなあ~?」


 クローバーはナイフを抜き、それをぺろりと舐めた。

 そして、てらてらと光るナイフを少女の頬に這わせ……。


「ひ、ひぃっ……。だ、誰か助けて……!」


「ヒャーッハッハッハッハッハ! そんなもんだよなあ! てめえの命が惜しい! お嬢ちゃんの勇気なんざ、その程度のものだってことだ! さあて、俺様はお嬢ちゃんで楽しませてもらおうかなあ」


「や、やめるのじゃー!」


「うるせえじじい!」


 殴打!


「ウグワーッ!!」


 老人は頭から血を流して失神した。


「おじいちゃん!!」


「さあ、お楽しみだぜ……!」


「イヤアーッ!!」


 少女の叫びが荒野に響き渡る。盗賊団の下っ端が、歓声を上げた。

 それに応える者は誰もいないのか。

 そう、弱きものは奪われ、殺され、強きものだけがますます栄える無法の大地。


 それこそが、異世界世紀末。


 だが。

 そこに一陣の風が吹く。


「ん?」


 クローバーは顔を上げた。

 すぐ目の前につむじ風が生まれていた。


 その中に、誰かがいる。


「ああん……? なんだ、お前ェ……」


 その時である。

 風を切り裂き、クローバーに向けて伸びるものがあった。

 それは……手刀!


「は?」


「空手チョップ!」


「ウグワーッ!?」


 手刀一閃!

 クローバーのナイフがへし折られ、ついでにクローバーの手首がおかしな方向に曲がり、ついでにクローバーの胸元に斜め一文字の斬撃の跡が生まれ、ついでにクローバーは40mほど吹き飛ばされた。


「あ、ああ……」


 目の前で起こったことが理解できず、少女ミーナは震える。

 そして、おずおずと、現れた人物を見上げた。


 真っ白な、聖なる衣。

 日に焼けた美しい肌。

 流れるのは、美しき黄金の髪。


「聖女……様……?」


「あなたが私をそう呼ぶのならば、私もそう名乗るとしましょう」


 彼女は優しい声で答えた。

 美しい顔に、微笑みが浮かぶ。

 少女ミーナは、心に安らぎが訪れるのを感じた。


 だが、盗賊団からすると安らぎどころではない。

 いきなり現れた白い衣の女が、チョップ一閃でクローバーのキングを吹き飛ばしたのだ。


「おおお、お頭ァ!?」


「何者だてめえ!」


「あの女……でけぇっ!!」


 ミーナが聖女と呼んだ女性は、盗賊たちを睥睨した。


 その身の丈、2m近い。

 鍛え抜かれた腕は太く。

 大木のように大地を踏みしめる足があり、その姿勢は強風の中でこゆるぎもしない。


「これは、プロレスの神が与えたもうたチャンスか。ならば私は、この人生を今度こそ間違いなく生きよう」


 彼女は一人、呟く。

 そして、悠然と歩み始めた。


 盗賊団に向かって。


「我が名を問いましたか。悪党に名乗る名は持ち合わせぬ、というのが定石でしょう。ですが、我が身は聖女。そしてエンターティナーです」


「エンターティナー……?」


 盗賊たちが耳慣れぬ単語に首を傾げた。


「この肉体の名を、あえて名乗りましょう。我が名はアンゼリカ。聖女アンゼリカです……! ──いたいけな少女に手を出し、貧しき村の食料を奪わんとする悪党どもよ」


 聖女は手招きする。


「かかってこいやぁっ!!」


─────────

新作、始まりました!

当作品は、聖女(凄女)による、荒廃した異世界の救世、そしてドキドキ・ワクワクの王宮での恋のやりとり(!?)を扱います。

爽快、世紀末バトルアクション宮廷ラブロマンス救世聖女スペクタクル活劇とでも申しましょうか。


ウグワーッ!!の正統な後継作品です。よろしくお願いします!


お読みいただきありがとうございます!

本作のモットーは、ノーストレス、サクサク爽快世紀末風ファンタジーであります。

こんなちょっと暗くなってる世の中だからこそ、みんなが幸せになる聖女ものをお届けしたく思います!


面白い!

俺の名前を言ってみろ!

ウグワー!

など感じていただけましたら、下の方の★か、ビューワーアプリなら下の方の矢印を展開し、ちょこちょこっと評価いただけますと作者が大喜びします!

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