ファンタジー胸キュン短編集
金目猫
1話 『灯り』 貴女と幼馴染の騎士
ゆっくりと 夜の帳が降りてくる
白い都が
鐘が鳴る。
帰宅を知らせるファンファーレが響き渡る。
人々は家路につき ほんのりとした灯りが灯りだす。
貴女はそんな景色を ぼんやりと丘の上からながめていた。
「心安まる光だな」
「アラン……」
貴女のとなりにアランが座る。
幼馴染のアランは今日は騎士隊の服は着ていない。
非番なのだろう。
「お前はいつも
「好きなの、
「良家の娘が一人でこんな時間にこんなところにいるのは感心できないからさ」
「……そうね」
またひとつ 灯りが
「私 この国が好きよ。白い都が色づいていくこの時間が好き。温かいスープの匂いが ここまで漂ってきそうな安らぎを感じるの」
「お前はよく町に行くからな……」
「ふふふ、そのたびに怒られるけどね」
「変わった娘だ」
アランは ふっ と 笑う。
「人形のようにただ着飾って 働いている人達の上に乗っかってるのは嫌なの。私も 帰ってくる人のために スープを作って待っていたいわ」
「相手は?」
「……聞かないで」
「見合いの話は腐るほどあるだろう」
「……」
「どうした?」
「一人も会ったことないわ」
「何故だ」
「私が逃げたから」
アランは苦笑する
「だって 好きでもない人と結婚なんて出来ないもの」
「いるのか?好きなヤツが」
「それは……」
貴女は彼を見つめる
「聞きたい?」
「ああ」
「この国の事を……この国の民のことを一番考えている人……」
彼は貴女の髪をそっと撫でる。
「……王か?」
「……」
「そうか、お前は王妃になりたかったのか」
「……バカ」
「バカは酷いぜ?」
言葉とは裏腹に 甘い声でアランが返す。
アランが貴女の肩を抱き、
あなたはそのまま 彼の肩に コツン と 頭をもたげた。
「バカじゃないなら 鈍感なのね」
「かもな」
アランが貴女の頭に頬を寄せる。
肩に置いた手を貴女の頭に移すと、顔を傾けた。
ゆっくりと、貴女のくちびるに 自分のくちびるを重ねる。
唇に あふれんばかりの愛を感じる。
あの安堵感……家の灯りと同じ……
「俺のために スープを作ってくれるか?」
「お望みならば 毎日でも」
「一生だぜ?」
二人はもう一度キスをする
ここにも 灯りがひとつ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます