第324話 討伐の報告へ


 翌日の朝、想定通りドーナは二日酔いで気分が悪そうだったので、回復魔法で二日酔いを治してあげると、彼女はとても喜んだ。


「まっさか二日酔いまで何とかできるとは、ヒイラギの魔法は万能だねぇ。これなら前日にいくら飲んだって大丈夫だ。」


「あんまり調子に乗らないこと。酒は飲んでも飲まれるなって言う言葉があるんだからな。」


 少し背伸びをして、ドーナのおでこをぺしっと叩く。ドーナは背が俺よりも高いから、ツッコミを入れるのも背伸びしないといけない。


「あたっ、わかってるよ。次からは気をつけるよ。」


「あっはは、でもまぁさっき案でのドーナちゃんの二日酔い状態は、日本酒初心者のあるあるだから、つぎは多分大丈夫だよ。」


 そんな会話をしながら俺達はレイドのギルドに向かう。そして人混みを掻き分けながら、2階のナイルさんがいる部屋の前に立った。


「ナイル、アタシだ。入るよ~。」


 ろくにノックもせずにドーナは扉を開けると、そこには相も変わらず書類仕事に励んでいるナイルさんがいた。彼は手を動かしながらこちらに視線を向ける。


「アンタらか、昨日の深夜……ブルーフレイムガリトンが出現する森で、大きな魔力反応があったって報告が上がってる。それもアンタらか?」


「まぁ、十中八九間違いなくアタシらだねぇ。」


「んで、肝心のブルーフレイムガリトンはどうなったんだ?」


「それはここに。」


 俺はマジックバッグを逆さまにして、しまっておいたブルーフレイムガリトンを部屋のど真ん中に出現させた。


「……まさか、マジで狩ってきちまったのか。」


 少し呆れたようにため息を吐きながら、彼は席を立つと、ブルーフレイムガリトンに歩み寄って手を触れた。


「普通のガリトンよりもデカいし、何よりこの青色の縞模様……間違いねぇな。」


 彼に確認をしてもらったところで、ミカミさんが彼にある提案をする。


「ところでナイル君、このブルーフレイムガリトンのサンプル……欲しくはないかな?」


「そりゃあもちろん、もらえるもんなら欲しいが……。」


「キミがもし、今回の報酬金に色を付けてくれるなら~……サンプルの提供も考えても良いよ?」


「……具体的にどのぐらい欲しいんだ?」


「ま、2倍ぐらいかな。この条件を飲んでくれるなら、ブルーフレイムガリトンの頭と内臓を提供することを約束するよ。」


「……わかった。その条件、喜んで飲ませてもらう。じゃあ今すぐ解体師に連絡を……。」


「あ、その必要はないよ。ちょっと汚れても良い場所を貸してくれるなら、私達がそこでやるから。」


 そして交渉が成立した後、俺達はこのギルドの解体場と呼ばれている、大型の魔物などを解体する場所に案内された。


「もし必要なら、ここの道具も好きに使ってもらっていいぞ。」


「大丈夫です。」


 俺はブルーフレイムガリトンとレヴァをマジックバッグから取り出すと、レヴァはすぐに日本刀のような形に変形する。そして頭の中でイメージを抱きながら、レヴァをブルーフレイムガリトンへと振り下ろした。


「ふっ!!」


 一瞬ブルーフレイムガリトンの体に刃が通った感触を感じた後、頭がゴトンと落ちてそれと一緒にずるりと内臓もついてきた。


「は?い、今何が起こった?」


 呆気にとられているナイルさんの前で、中身が空になった胴体の方をマジックバッグにしまう。そしてくるりと後ろを振り返って彼に声をかけた。


「一応内臓は傷付けないように、頭と一緒に取り除いておきました。サンプルはこれで十分ですよね?」


「あ、あぁ……。」


「あ、それと血液はこの瓶に入れておきました。これも使わないのでサンプルにどうぞ。」


 レヴァで一瞬で解体を終わらせるとともに、魔法で血だけを抽出しておいたのだ。


「か、感謝する。」


「それじゃナイル君、約束の報酬をもらえるかな?」


 ミカミさんはナイルさんのところに飛んで行って、両手を差し出してにこりと笑う。そのミカミさんの両手に優しくナイルさんは白金貨を3枚おいた。


「白金貨1枚と金貨50枚の倍額、白金貨3枚だ。間違いないな?」


「うんっ、偽物の硬貨でもないみたいだし、大丈夫だね。」


「おいおい、それは流石に疑いすぎじゃあねぇかい?」


「キミには一つ前科があるからね。私達を契約書でだまそうとした前科がね。」


 じろりと冷たい視線をミカミさんがナイルさんへと送ると、彼は少し冷や汗を流しながら一歩後ずさった。


「んで、まぁブルーフレイムガリトンはアタシらがぶっ倒したわけだけど、他に困ってることとかは無いのかい?」


「今のところは大丈夫だ。他のハンターで対処できるような依頼しかねぇよ。」


「ちぇっ、もうちょっと強い魔物とかがいたら良かったんだけどねぇ。」


「冗談は止してくれ。みんながみんなアンタらみたいにバカ強いわけじゃねぇんだからよ。」


「ま、もう少しここにいるつもりだから、なんかあったら声かけてきなよ。」


「ホントにヤバい依頼があったら声をかけるよ。」


 そんな約束を交わした後、俺達は一度宿へと戻るのだった。


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