鍋の〆には


 みんな熱い鍋の中の具材をハフハフと口の中で冷ましながら、キックバトルバードの水炊きを美味しい美味しいと言って楽しんでいた。みんなの反応も上々なので、俺もそろそろ食べるとしよう。


「じゃあ早速キックバトルバードの肉から頂いてみようかな。」


 鍋から肉を取ってポン酢につけて口の中に放り込んだ。


「んっはふ、熱っ……でも美味ぁ。」


 ジューシーで、プリッとした食感……。噛めば甘く、旨味の強い肉汁が鍋の出汁と一緒に溢れ出して、次第に繊維が解けていくように口の中でほぐれていく。


「出汁を吸った野菜と豆腐も美味しいなぁ。」


 出汁の味がすごくいいから、それを吸った野菜も豆腐もすごく美味しく仕上がっている。今回白湯スープにしたから尚更だな。


 そして具材がすっかりなくなり、鍋にスープだけが残った時、俺は流水で一度洗ったご飯をそのスープの中に入れた。


「おっ、鍋の〆は雑炊か。」


「ラーメンなんかも考えたんですけど、やっぱり出汁が最高に美味しいので、今回は雑炊にしました。」


 ご飯をスープの中に入れて、溶き卵を流し入れてから一度蓋を閉じた。そこで少し火を強くして卵に火が入るのを待つ。その最中、リリンが口を開いた。


「なるほどね、あなたが言っていたことが今わかったわ。あのご飯が汁に溶けているコラーゲンをたっぷり吸ってくれるってわけね?」


「その通り。だからコラーゲンが欲しい人にとっては、ここからが勝負って感じだな。」


「ふふ、よくわかったわ。」


 そう説明すると、女性陣の雰囲気が変わった……ピリリと空気が張り詰めるような、食事している最中とは思えない異様な雰囲気だ。


「……一応もう一回忠告しておくけど、さっきとは比にならないぐらい冷めにくいし、熱々だからがっつくと普通に口の中火傷するからな。」


 すると異様だった雰囲気は解け、みんな大人しく雑炊が出来上がるのを待っていた。


「そろそろいいかな?」


 鍋の蓋を開けてみると、お米が出汁に投入した時よりも膨らんでいて、卵がとろとろの半熟に仕上がっていた。


「よし、できてるな。みんな食べてもいいぞ~。シアとメリッサの分は俺が冷ましてあげるから、少しだけ待ってな?」


「「うん!!」」


 シアとメリッサの分の雑炊を器に盛り付けて、息を吹きかけて冷ましてから2人に食べさせた。


「美味しいか?」


「おいひぃ~♪」


「おいしい…もっともっとほしい!」


「はいよ。」


 そうしてみんなで最後の最後まで残らず、キックバトルバードの水炊きを味わいつくしたのだった。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る