いざ内見へ
最終的にメーネルが候補として残したのは、3軒の物件だった。まさかこんなにアッサリと、こちらの要望を満たしている物件が見つかるとは驚きだった。
「現状、すべての要望を満たしているのはこの3軒です。」
「ふむ、見せてもらおう。」
詳細の書かれた紙を受け取って、一つ一つ目を通していく。
まず一つ目に目を通した物件は、築30年で2階建ての物件。間取りを見たところ、こちらの要望通り1階と2階にちゃんとキッチンがある。
ここまでは良いのだが、そのキッチンは家庭用でスペースは狭い。それだけがマイナスポイントかな。
2軒目は、かなり新しい築5年の物件……。もとは飲食店として建てられたようで、一階にかなり広いキッチンがある。それでいて、販売スペースもしっかり確保できそうだ。ただ、条件が良いだけあって、賃貸にするにしろ、丸ごと買うにしろ、値段がお高い。
最後に目を通した物件は、驚くことに築120年だという。条件的には2軒目とほぼ同じだが、こちらの方が保管庫などに使えるような空き部屋が幾つかあるみたいだ。値段は2軒目よりもかなり安いな。あとは虫とかが住み着いてなければ良いんだが。
「なるほどな。」
「どうするのじゃ?」
「こことここ、2つの物件を内見したい。」
「かしこまりました。では早速参りましょう。」
メーネルが準備を整えている間に、俺はユリにあることを耳打ちした。
「ユリ、今から内見に行く物件で、小動物の痕跡と虫の痕跡を気をつけて探してくれ。」
「へ?わ、わかった。」
そしていよいよ内見に行くことになり、まずは王宮に近い新しい方の物件から内見することになった。
「こちらが築年数の新しい方の物件になります。」
「うん、やっぱり外観はかなり綺麗だな。」
チラリとユリの方を見ると、物件と物件の間にある細い道をジッと見つめて、何やら訝しげな表情を浮かべていた。
「ユリ、何か気になることでもあったか?」
「……ちょっとだけ。中に入らないと確証は……。」
「わかった。じゃあ早速中を見せてほしい。」
そうお願いするとメーネルはすぐに鍵を開けてくれた。
「どうぞ満足するまでご覧ください。」
ミクモとユリと一緒に中に入る。外観と同じく、内装もかなり綺麗だ。
「厨房も見てみるか。」
問題の厨房に足を踏み入れ、じっくりと眺めていると、ユリが何かを見つけたようでこちらを手招きしていた。
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