野外料理の醍醐味


 火で焼かれているレインガルーダを見つめて、ウォータードラゴンは口からダラダラと、まるで滝のような大量のよだれを流している。


「お、美味しそうですねぇ〜。」


「そうだな。」


 彼女はまるで魅入られるように、皮が黄金色になってきているレインガルーダにどんどん顔を近づけていく。


「今つまみ食いしたら、食べさせてやらないぞ?」


「はっ!?あ、あはは〜美味しそうだったのでぇ、ついつい……我慢します。」


 薪の前で彼女は正座して、じっ……と焼かれるレインガルーダを見つめていた。


「にしても、数が少なくなったからか、上に飛んでる奴らも襲ってこなくなったな。」


「メスが様子を見に来たみたいですからねぇ〜。こっちが手を出さなかったら、もう襲ってこないと思いますよぉ〜。」


「そっか、それならもう安全だな。」


 これだけの数のレインガルーダを討伐すれば、人に及ぶ被害も少なくなるだろう。後は放っておいてもきっと大丈夫。


「っと、脂が滴ってきたな。」


 滴ってきている脂を刷毛ですくい取って、レインガルーダの肉全体に塗りたくっていく。丸鶏はこうして焼いてあげると、表面の皮がパリッと仕上がるのだ。


「さて、どのぐらい火が入ったかな。」


 金属の串を肉の中心まで刺し込み、それの温度を触って確かめる。


「ん〜、あともうちょっとって感じかな。」


 まだ中心部分が、ほんのりと温かいだけに留まっている。もう少し熱くなれば火が入った証拠なんだが……。


「ま、待ち切れないですねぇ。」


「こういうのを今か、今か〜って待つのが、野外料理の醍醐味だぞ?」


「うぅ〜、焦らされるのは嫌いですよぉ〜。」


 それから滴ってきた脂を塗って焼くこと十分後……もう一度金串を刺して温度を確認してみると、すっかり中は熱々になっていた。


「よっし、出来たぞ。」


「ホントですかぁ!?」


 レインガルーダを火から下ろして、彼女に手渡した。


「味付けはシンプルに塩と胡椒だけだ。今回は素材本来の味を確かめたかったからな。」


「充分ですよぉ〜、じゃあいただきま〜す!!」


 焦らしから解放された彼女は、大口でレインガルーダにかぶりつく。彼女がかぶりついた瞬間に、パリッと皮が弾け、肉汁がジュワっと溢れ出ていた。


 食べている様子を見ているだけでも、お腹が減ってくるような光景だ。


「おぉ……美味しいです〜!!」


 一口じっくりと味わった後、彼女はキラキラと目を輝かせながら、レインガルーダを骨ごとバリバリと食べ始めた。


「さて、俺も食べてみようか。」


 

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