宣言通りやってきたシン


 アプルのコンポートをどんどん売っていると、行列の後方が何やら騒がしくなってきた。どうやらがやってきたらしいな。行列を押しのけてこないってことは律義にちゃんと並んでいるんだろう。


 そんな俺の予想は正しかったらしく、どんどん行列を捌いていると、列の中にやたら背の高い見覚えのある人物の姿が見えた。


「むっ!!おぉーい、ヒイラギッ!!我が来たぞー!!」


「ははは、元気だな。」


 そしてやっとシンの順番が回ってくると、彼は子供たちが売っているアプルのコンポートを興味深そうに見つめていた。


「これはアプルなのか?」


「あぁ、コンポートって言うアプルを柔らかく煮込んだお菓子だ。まぁ、とやかく言うよりも一回試食してみるか?」


「うむっ、頂こう。」


 まずはそのまま、アプルのコンポートを一切れフォークで刺して彼に手渡した。すると一口でシンは食べ終えてしまう。


「んっ!?不思議な食感だ……生のアプルとはまるで違うな。」


「味の方は?」


「うむ、味に関しては何も文句の付け所は無い。ただこれ単品で食べるとなれば少々飽きてしまうやもしれん。」


「そう言うと思って、いろんな食べ方を体験できるように準備しといたよ。」


 俺は焼いたトーストの上にジャムの代わりにアプルのコンポートを乗せたものと、販売中のレアチーズケーキにコンポート添えたものをシンに手渡した。


「ほぅ、このような食べ方もできるのか。」


「そのままバクバク食べるのも悪くはないが、こんな風に焼いたパンの上に乗せたりすると、また日々の食卓が豊かになるぞ。」


「ふむふむ。」


 まずはシンはコンポートを乗せたトーストにかぶりつく。直後、カッと目を大きく見開いた。


「むっ!!これは美味いぞ!!贅沢をしている気分になるな。」


 好評だったらしく、シンはあっという間にパンを食べ終えてしまった。そして口元を拭きながら、今度はレアチーズケーキへと視線を向けた。


「今度は甘いものに甘いものの組み合わせだな。では早速頂いてみるとしよう。」


 シンはアプルのコンポートを一切れと、レアチーズケーキを口に頬張った。すると、むふ~と大きく鼻から息を吐き出して、幸せそうな表情で食べている。


「これは……これは美味い。ねっとりと濃厚な味わいに、このアプルの甘酸っぱさがものすごく合っている。もっと欲しいぞヒイラギ!!」


「今ので試食はお終いだ。もっと食べたかったらぜひとも買って行ってくれ。」


 そして結局シンはアプルのコンポートを五つも買うと、今度はレアチーズケーキを買いに行くと言って走って行ってしまった。



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