問題の孤児院へ


 シンと街を歩きながら、孤児院を目指していると、王都のかなり外れの方へと来てしまっていた。


「おっ、やっと見えてきたな。」


 目先に建つ一軒の建物……この外れの方にある建物の中では一番大きい。恐らく、あれが孤児院だな。


「我もこの外れの方まで来たのは久方ぶりであるな。」


「まぁ、シンも国王としての仕事があるだろうし、なかなか来れないのも仕方がないな。」


 そんな話をしながら、孤児院の方へと歩いていると、子供達が楽しそうにはしゃぐ声が聞こえてきた。


「子どもたちの元気そうな声が聞こえてくる。実に良い事だな。」


「あぁ、そうだな。」


 そしてシンと孤児院の門の前にたどり着くと、こちらに気付いた子供達がたくさん集まってくる。


「おうさまだ〜!!」


「勇者さまもいる!!」


「皆、元気で嬉しいぞ。」


 元気な子どもたちに囲まれていると、奥から優しそうな熊の獣人のおばあちゃんがこちらに歩いてきた。


「国王様、勇者様、ようこそいらっしゃいました。」


「む……。」


 その人を見た瞬間にシンは何かに気が付く。


「院長殿、少し痩せた……か?」


 シンのその問いかけに、院長のおばあちゃんは笑みを崩さずに答えた。


「もう私も歳ですから。体が老いたのでしょう。」


「むぅ……そうか。」


「年寄りとはこういうものでございます。それで、本日は勇者様と共に何の御用ですか?」


「いや皆が元気に暮らしているか、ふと気になったものでな。」


「それはそれは、ありがとうございます。どうぞ子供達の元気な姿を、ご覧になって行ってくださいな。」


「うむ、そうさせてもらうぞ。……っとそうだそうだ、これを後で子供達と一緒に食べてくれ。」


 そしてシンは、彼女に俺の店で販売しているお菓子の詰め合わせを手渡した。


「まぁ!!ありがとうございます。子供達みんなこのお菓子大好きなんです。……良ければ国王様が子供達に配って下さいませんか?」


「我がか?」


「そのほうがきっと子供達も喜ぶと思うんです。」


「そういうものか、では我が配ってこよう!!」


 すると、シンは子供達が集まっている所へとお菓子を片手に走って行った。俺がそれを見送っていると、院長がこちらを向く。


「良ければ勇者様も一緒に……。」


「うん、でもその前に一つだけ。正直に教えてほしいことがあるんだ。」


「なんでしょう?」


「最後にまともなご飯を食べたのはいつだ?」


「……!!」


 彼女の体から見える栄養失調のサイン。シンのことは言葉で上手く躱せたかもしれないけど、俺の目は誤魔化せない。


 嘘か真かを見極めるために、彼女の目の奥を覗き込みながら答えを待っていると、少し間をおいてから答えが返ってきた。

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