ナルダ襲来


 師匠からご褒美を要求されたので、俺は急いで人間の国の王都にある市場へと、ドーナ達を引き連れて向かった。


「みんな、付き合ってもらって悪いな。」


「何言ってるんだい、謝ることなんてなんにも無いよ。」


「そうよ〜、最近ヒイラギがシズハに構ってばっかりだったから、こういう時間が欲しかったのよね。」


「二人きりではないとは言え、主とともに出掛けるこの時間が待ち遠しかったのじゃ。」


「そう言ってくれると助かるよ。」


 そして目的のものを探して、歩いていた時……連絡用の魔道具がブルブルと震えて、誰かからの着信を知らせた。


「ん?誰だろう。……はい、もしもし?」


『社長か!?』


 魔道具から聞こえてきたのは、カリンだった。声から焦っている様子が伝わってくる。


『急いで戻って来てくれ!!が来るぞッ!!』


「なっ……わかりました、すぐ帰ります。」


 魔道具の通信を切り、みんなにこの事を伝えた。


「みんな、エルフの国にナルダって魔法使いが襲撃に来るかもしれない。」


「チッ、良い時に邪魔してくれるねぇ全く。」


「そのナルダって奴の狙いは、多分……シズハよね?」


「おそらくな。」


 チラリとレイの方に視線を向けると、彼女は一つ大きく頷き、指をパチンと鳴らす。それと同時に俺たちの足元に大きな魔法陣が現れた。

 いつもなら、ここから光が発せられてすぐに移動魔法が発動するはずなのだが……。


「むっ!?魔法が妨害されておるじゃと!?」


「なんだって!?つ、使えないのか?」


「ふんぎぎぎ……ワシの魔力を全て込めるのじゃ〜っ!!」


 空間が歪むほど、レイが魔力を魔法に込めていくが、全く発動する気配がない。


「だ、ダメじゃ……ワシを持ってしても突破できぬ。」


「魔法は無理……コレも使えないかな。」


 俺が取り出したのは、カリンからもらった転送の結晶。これに魔力を少し込めてみると、体がフワリと浮く感覚があった。


 そして次の瞬間には、転送の結晶を持っていた俺だけがエルフの国の上空へと転移してしていた。


「おおぉぉっ!?な、なんでこんなところにっ!!」


 落下の最中に体を龍化させ、背中から翼を生やす。そして一気に降下していく。


「良し、到着……。」


 辺りを見渡してみると、エルフたちが避難を始めていた。


「あっ、あなた様っ!!」


「フィースタ、他のみんなは無事か?」


「はい、カリン様が早急に避難指示を出したので、まだ被害はありません。」


「シア達は見なかったか?」


「シアちゃん達は、フレイさんが連れていきました。」


「なら安心だ。……カリンはどこに?」


「向こうであなた様を待っています。」


「わかった。兎に角フィースタ達は避難を急いでくれ。」


 俺はカリンが待っているという場所へと、急いで向かった。


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