苦しみに耐えた成果
当番制が始まってから三日ほどが経つと、ドーナ達も師匠と打ち解けたようで、気さくに会話をする関係になったようだ。
しかし、それによって一つ大きな弊害も出ていて……それが俺の幼い頃の話を暴露されるという事だ。
「うぅ……大人になってから幼い頃の恥ずかしい話をされると、こんなに小っ恥ずかしくなるとは思ってませんでしたよ。」
俺は朝食を食べる師匠の前で、がっくりと項垂れた。師匠と気さくに会話するようになってしまった三人から、俺の子供の頃の話をめちゃくちゃ聞かされるのだ。
それがもう恥ずかしくて恥ずかしくてたまらない。
「はっはっは!!愛弟子のことになると、なんでも話したくなってしまってなぁ。ついつい話が進んでしまうんだ。」
「その、愛弟子って言われるのはすごく嬉しいんですけど、昔話を掘り起こされるのは恥ずかしいですよ。」
「そう照れることではないだろう?子ども頃の可愛い思い出というやつじゃないか。」
「それが恥ずかしいんですよ!!」
愉快そうに笑う師匠は、一度話を切り上げて、いつもの日課である神華樹の果実による中和をするように促してきた。
「なんだか今日はそんなに苦しくない気がするんだ。」
「どういうことです?」
「何ていうか……いつもはもうそれを見るだけで嫌悪感が凄まじいんだが、今日はそんなに嫌悪感を感じないんだ。」
「なるほど。」
コレも毎日積み重ねてきた成果なのだろうか?兎にも角にも本当に苦しみが緩和されているかは、食べてみないと分からない。
「じゃあ……食べてみますか。」
「あぁ。」
いざ師匠に神華樹の果実を食べさせてみると、普段とは違い、すぐには飲み込まず……味わって食べる余裕があるようだった。
「んっ…んぐぐ……ぷはっ!!」
少ししかめっ面になりながらも、本当にあまり苦しむことなく。完食してしまった。
「ふふ、ほ、ほらな?」
少し唇を震わせながら、師匠は俺の目をみてニコッと笑った。
「死の女神との繋がりが薄くなってきたってことなんでしょうか。」
「恐らくはそうだろう。いつもは頭の中であいつの声がずっと聞こえていたんだが……今はそれすらも聞こえなくなっている。」
「頑張って毎日続けた甲斐がありましたね。」
「あぁ、まったくそうだな。そういうわけで、私はご褒美を所望するぞ。」
「え……ご、ご褒美ですか?」
「頑張った暁にはご褒美がつきものだろう?」
「ま、まぁそうですけど……。」
「じゃあ私は、首を長くして待ってるからな。いつものアレ……頼むぞ?」
いつになく上機嫌な師匠に朝ごはんを食べさせてから、俺は急いで師匠へのご褒美の用意に取り掛かった。
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