師匠との再会
フードの女の正体が、俺の師匠だと判明した。
「何で師匠がこの世界にいるんですか。」
「そ、それは私だって知らないぞ。病でぽっくり逝ったと思えば、死の女神にこの世界に復活させられたんだからな。」
「でも俺よりも後にこの世界に来たんですよね?」
「まぁ……そうだな。私がこの世界に足をつけたのはつい最近の事。わけの分からないことだらけだったが、この世界にお前がいるとわかった時は、まぁ言葉に表せないほど嬉しかったぞ。」
屈託のない笑顔で彼女は言った。
「そうだ!
「俺に?何ですか?」
「お前がこの世界にいるってことは、向こうで……日本で死んだのか?」
「自分自身ちょっと信じられませんでしたけど、そうみたいです。」
「……そうか。」
すると師匠の体からドス黒いオーラが溢れ出してくる。この感じは良く覚えてる……この人今めちゃくちゃ怒ってる!!
「何で死んだんだ?至極、健康体だったはずだよなぁ?ということは……事故か?それとも誰かに殺されたのか?んん?」
「じ、実は厨房の中の事故で……。」
圧に押されながらそう答えを絞り出すと、師匠は俺の目の奥を覗き込みながら、目を細める。
「相変わらず嘘をつくのは下手だなぁ柊?」
「いっ!?」
「で、誰に殺られた?正直に私に話してみなさい?」
こういう詰め方もあの頃と全く変わってない。改めて実感できる。本当に師匠がこの世界にいるということを。
「ん?柊、なぜ泣いている?そんなに、悲しいことを聞いてしまったか?」
「いえ、本当に師匠なんだな……って改めて実感したら嬉しくて。」
「ははは、まぁ本来死んだ人間に会えるなんて、現実的な話じゃないからな。そ・れ・にぃ?」
ニヤッと師匠は笑うと、俺の頭に手を乗せてきた。そしてそのままワシャワシャと優しく撫で始める。
「お前は私のことが好きだったしなぁ〜。覚えているか?まだお前が幼い頃、私をお嫁にすると誓っていたことを。」
「む、昔の話ですよ。」
「今は気持ちは変わってしまったということか?」
「い、いやそういうことじゃなくて……。」
「ははは、冗談だ。相変わらずからかうと面白い反応をするなお前は。」
いつまで経っても、この人には子供扱いされてしまうな。
「っと、すっかり話が逸れてしまったな。それに話に花が咲いて時間も経ってしまった。そろそろ戻らねばな。その前に、これだけは食べていこう。」
アンネが用意してくれたお菓子を、残さず頬張り、マンドラ茶を飲み干すと、師匠はフードを被って立ち上がった。
「ごちそうさまでした……。さてと、私はそろそろ帰るぞ。」
「……やっぱり戦わないといけないですか?」
「私としてもそれは本望ではない。だが、私の意志と関係なく、戦わされてしまう。だからこそ、犠牲が出る前に私を止めてくれ。」
「わかりました。必ず……止めてみせます。」
「頼んだぞ、柊。」
そして師匠は俺に一枚の紙を手渡すと、人混みに紛れて消えてしまった。
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