採血
拘束されているボルトドラゴンを見下ろしていると、奴の拘束されている実験室に何人か白衣を身に包んだ獣人が入っていく。
『では、血液採取から始めます。』
あそこにいる獣人の声が、近くのスピーカーのようなものから流れた。その声を聞いたジルが一つ頷いて合図を送る。
すると、下にいた白衣を着た獣人はあらかじめ用意していた、自分の体ほどもあるとんでもない大きさの注射器を構え……思い切りボルトドラゴンの尻尾の付け根へと刺した。
『採血開始。』
痛みを感じているのか、それとも強烈な異物感を感じているのか……ボルトドラゴンは小刻みにプルプルと震えている。
そんなことは気にせず、白衣の獣人は注射器で採血を進めていく。その様子を眺めていたジルがポツリと呟く。
「ふむ……やはり真っ黒な血液のようですな。」
注射器の中に採られていく血液は、ドロリ……と濃厚で真っ黒だった。
「うげ、いかにも健康状態に難アリの血液じゃ。わ、ワシはきっと真っ赤でサラサラなはずじゃ。」
「どうかな?最近ランと張り合って大食い勝負してるし、心配なら頼んで確かめてもらうか?」
すると、ニコニコと笑みを浮かべながらジルがレイの方を向く。それにビクッと彼女は反応した。
「い、嫌じゃ!!あんな針を体に入れたら死んでしまうのじゃ!!」
「ほっほっほ、大丈夫ですよ。アレは大きな魔物専用の注射器ですから。普通はこの大きさです。」
ジルはスッとポケットに手を入れると、よく病院で見るようなサイズの注射器を取り出した。
注射器を手にした彼から隠れるように、レイは俺に背中へと回ると、目を細めながらジルを睨みつけている。
さながら、注射が怖い年頃の子供のようだな。
「失礼しました、ほんの冗談でございます。」
にこやかに微笑みながら、ジルは再び注射器をポケットへと戻す。すると、ホッと安堵のため息を一つ吐いて、レイは俺の横に立った。
そんなやり取りをしている間にも、ボルトドラゴンのいる実験室では色々な検査が行われていた。
「今は何の検査をしてるんだ?」
「体温や健康状態の検査でございますね。なるべく健康状態を維持しながら、検査と実験を進めるために記録をつけているんです。」
その様子を眺めていると、俺たちのいる部屋に先程まで採血を行っていた獣人が、何かを持って入ってきた。
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