地下施設


 ジルのもう一つの顔を知って、驚いている最中にも、彼はレイが椅子代わりにしていたボルトドラゴンへと顔を近づける。


「ふむふむ、流石は龍種と言ったところでしょうか。生命力が凄まじいですな。」


 虫眼鏡のようなもので、ボルトドラゴンの体を隅々まで観察していくジル。するとあることに気がついた。


「おや?ところどころに真新しい皮膚が見受けられますな。しかし、これだけ全身が満遍なく黒焦げになっているのに、奇跡的にここだけ無事だったとは考えにくい。恐らくは再生したのでしょうか。」


 魔物を見慣れているジルならではの観察眼は凄まじく、あっという間に先程までボルトドラゴンが超再生で体を再生していたことに気がついてしまった。


「しかし、この紋様はいったい……。」


「それはワシが刻んだ封印の術式じゃ。超再生のスキルを一時的に封印しておる。」


「ふむ、それはどのぐらい効果が持続しますか?」


「ワシが魔力を使い切らなければ、永遠に効果は続くのじゃ。」


「おぉ!!それは助かりますね。調査中に暴れられては困りますからな。このぐらい弱っていてくれたほうが、こちらとしてもやりやすいです。」


 そしてジルがパンパンと手を叩くと、筋骨隆々の獣人達がボルトドラゴンを大きな荷車の上に乗せていく。


「では、運んでください。」


 そう声がかかると、ボルトドラゴンは荷車に揺られながら運ばれていった。


「せっかくですから、ヒイラギ様も少し見学していかれますか?」


「え、いいのか?」


「ほっほっほ、構いませんよ。シン様より、ヒイラギ様には国家機密も見せて良いと言われておりますから。」


「あはは……それじゃあ差し支えのない所まで懸隔させてもらおうかな。」


「少々心臓に悪い場面もございますので、その点だけご注意ください。それではこちらへどうぞ。」


 そして俺とレイは、ジルの後に続いて通りを歩いていった。すると、驚くことに市場にある、彼がオーナーを務める魔物肉専門店へと案内されたのだ。


「研究所みたいなところに行くんじゃ?」


 思わず前を歩くジルにそう問いかけてみると……。


「えぇ、これから施設へと参りますよ。まずはこちらの部屋へお入りください。」


 彼に案内されたのは、とても広く殺風景な部屋。壁には一つだけレバーが取り付けられている。


「これを下げると……。」


「おぉっ!?」


 ジルがおもむろにレバーを下げると、ガコン……と床が沈み、エレベーターのようにドンドン下へと下がっていく。


「実は私の営業するお店の地下が、施設になっているのですよ。他にも入口はありますが……それはまた次の機会にお見せしますね。」


 地下にそんな物があったとは……驚きで言葉が出てこない。いったいこの地下でどんな研究が行われているのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る