獣人国魔物生態調査機関最高責任者


 次に目を開けると、俺たちは獣人族の国の王都の目の前へと転移してきていた。


「さてさて、主の荷物はワシが請け負おうかの。」


「き、気を付けてくれよ?」


「お任せじゃ!!」


 そしてボルトドラゴンの尻尾をレイは鷲掴みにすると、俺の後に続いてズルズルと引きずりながらついてくる。


 当然そんな姿はあっという間に注目の的となり、すぐに獣人族の兵士達が駆け寄ってきた。


「ひ、ヒイラギ様、何事ですか?」


「あぁ、最近話題の凶暴な魔物を食べたドラゴンを生け捕りにできたから、研究機関に運ぼうかなって思ってさ。」


「わ、わかりました。それでは、ここで少しお待ち下さい。すぐに責任者を呼んできますから!!」


 俺たちにここで待つように伝えて、兵士の一人が大通りを急いで駆けていった。


「それじゃあちょっと待っとくか。」


「そうじゃな。ちょうどよい所に椅子もあるしのぉ。」


 ズン……と容赦なくレイはボルトドラゴンの体の上に座る。


「グェッ……。」


 すると、ボルトドラゴンの口から黒い煙とともに、カエルが潰れたような悲鳴が上がった。


「悲鳴を上げられるのであれば、ほどほどに元気じゃな。それともワシが重かったか?もしそうだと言うならば……殺すぞ?」


 目つきを鋭くしながら、ボルトドラゴンを威圧的にレイが見下ろすと、奴は恐怖で体をブルブルと震わせていた。


「レイ、いじめるのはそこまでだ。」


「ふむ、主のお声がかかった故この辺にしてやろう。本来ならば、龍種でこのような無様な姿を晒した愚か者は、この手で殺しているところだ。」


 レイがボルトドラゴンを脅していると、こちらに見知った人物が歩いてきた。


「ほっほっほ、これはまた……とんでもないものを捕まえてきましたな、ヒイラギ様。」


 愉快そうに笑いながら、こちらに歩いてきたのは、魔物肉専門店の店主…ジルだった。


「ジル、久しぶり。」


「えぇ、お久しぶりでございます。」


 こちらにペコリとお辞儀をしたジルの横には、さっき責任者を呼びに行った兵士がいた。


「あれ、もしかして……。」


「ほっほっほ、ヒイラギ様にこちらの顔を見せるのは初めてですな。改めまして自己紹介を……私、魔物肉専門店店主兼、獣人国魔物生態調査機関最高責任者のジルでございます。」


 

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