強くなったボルトドラゴン


 いやらしい笑みを顔面に張り付けているボルトドラゴンに、わかりきっていることではあるが俺は問いかけた。


「わかりきってるが、念のため聞いておく何の用だ?」


「わかってんだろ?わざわざ殺しに来てやったんだよォッ!!」


 再び俺の体に雷が落ちてくる。


「ぐっ、ずいぶん威力が上がったじゃないか。特訓でもしたのか?」


「クヒヒヒ、オレ様もよぉ驚いたぜぇ?この前愚かにもオレ様に歯向かってきやがった魔物を食ったら、体の奥底から力が湧いてくんだ。」


「……!!その魔物、まさか血が黒くなかったか?」


「あぁ、黒くてクソ不味かったぜ。だが、一瞬不味い思いをしてもこんなに力が溢れてくんなら、悪くねぇ。」


 よくわかった。こいつは例の凶暴化した魔物を食うことによって、大きく力を増したらしい。ってことはこいつ自身ももう……。


「さぁて、じゃあそろそろ死んでくれよなァ!!」


 そして再び雷を落とそうと、翼を大きく横に広げたボルトドラゴン。奴に俺は一気に近づくと、首根っこを鷲掴みにした。


「ここじゃ街の人達が危ないだろ。場所を変えるぞ。」


「チッ、関係ねぇなァ!!」


 そのままボルトドラゴンは雷を落とし、自分ごと雷で貫いた。しかし、奴の方にダメージは無く俺だけが少しダメージを喰らってしまう。


「俺には関係あるんだよ。」


 しびれる手に力を込めて、逃げられないようにしてから、俺は一気に王都から離れて近くの荒野へと戦闘場所を移した。


「ほらここなら思いっ切り戦ってやる。」


 ブン…と勢いをつけてボルトドラゴンを放り投げると、奴は空中で体を翻して体勢を立て直して俺のことをぎろりと睨みつけてきた。


「ハッ、上等だこの野郎……特大の雷をぶつけてやる。」


 ボルトドラゴンが体から電気をバチバチと放出すると、あっという間に俺の上に黒い雲が立ち込め始めた。そして五本の大きな雷が落ちてくると、その雷からボルトドラゴンとそっくりな見た目のドラゴンが五体現れた。


「増えた?」


「「「オレ様の新しいスキルだ。こいつもあの魔物を食ってから使えるようになったんだぜ?」」」


 周りに現れたボルトドラゴンの分身体のようなものも同じく声を発している。ただの実体のない分身なら何も問題は無いが、この感じだと実体がありそうだな。


 警戒心を強めていると、本体のボルトドラゴンと同時に周りの分身もお同時にブレスの構えをとったのだ。


「「「お望み通り六体分のサンダーブレスをくれてやる。これで消し炭になりやがれぇっ!!」」」

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