マドゥという少年
一度おかわりを取りにカリンの屋敷の一階に向かうと、そこでは既にポッコリとお腹を膨らませたカリンとユリの二人が満足そうな顔をしてソファーに横になっていた。
「お、戻ったか社長。」
「ご飯を食べてちょっとは元気が出ましたか?」
「あぁ、腹いっぱい飯を食えば元気が出る…という昔からの言い伝えには素直に従うべきだったと痛感した。飯を食っただけでこんなに体の調子がよくなるとは、此方自身驚きだったぞ。」
「それは何よりでした。」
二人の食べ終わった食器も片付けながら、俺は少年のおかわりのリゾットを盛り付ける。すると、カリンが少年の様子について問いかけてきた。
「ところで、あの少年の様子はどうだった?」
「急にここに連れてこられたから、少し動揺してるみたいです。」
「ふむ、まぁ致し方のないことだな。混乱して魔物化しなかっただけで十分だろう。」
「そうですね。」
「正直このパンパンになってしまった腹でまともに動けるとは思えんからな。」
くつくつと笑って、カリンはお腹をさすりながら言った。
「さて、では此方も少年の顔を見に行くとしようか。」
「アタシもその少年のことは気になるけど、そろそろ獣人族の国に営業に行かなきゃ。」
「おぉ、もうそんな時間か。気を付けて行ってくるのだぞユリ。」
「行ってくるぞ母上!!ヒイラギ社長、今日もお菓子を完売させてくるからな!!」
「よろしく頼むよ。」
そしてユリは元気よく屋敷を飛び出していった。
「よっと、では此方等も少年のもとへ向かうか社長。」
「そうですね。」
リゾットのおかわりを手に、カリンと共に少年のいる二階の部屋に向かう。部屋の前に着くとカリンがコンコンと部屋をノックした。
「少年、入るぞ。」
そう声をかけてからカリンはゆっくりと扉を開ける。すると、ベッドの上にいた少年は少し警戒しながらカリンに視線を向けた。
「ん、そんなに警戒せずとも良い。此方等は少年の味方だ……とはいっても簡単には信じられんか。」
そう語りかけながらカリンは少年のベッドに腰を下ろした。
「今はとにかく休め。休んで気を落ち着かせ、此方等に話をしたくなったら、気が向いたときに話しかけるがよい。」
そう語りかけている彼女に、少年の要望したおかわりのリゾットを手渡した。
「ほら、飯だ。社長の作った飯は美味かっただろう?」
少年にリゾットを手渡しながら彼女がそう問いかけると、少年は何度もコクコクと頷いた。そんな少年の反応にカリンは満足したのか、一つ大きく頷くと思い出したようにある質問を投げかけた。
「っと、そういえば少年…名は何という?」
「……
「そうかそうか、マドゥか。覚えたぞ~。此方はカリンという。こっちの人間は……。」
「ヒイラギだ。よろしくな。」
何とか少年の名も知ることができたので、そこから俺とカリンは少年の心を開くべくコミュニケーションを図るのだった。
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