カリンからの伝言


 オークを解体してもらった後、俺はユリ達の営業の様子を見るために、彼女達がお店を広げている場所へと向かう。


 すると、すぐに見えてきたのは二本の長蛇の列……。それはユリ達のお店と、ミクモの豆腐店へと続いていた。


 その横を通って、俺は忙しそうに動いているユリ達の元へ顔を出した。


「今日も大繁盛してるみたいだな。」


「あ!!社長、来てくれたんだな。」


「忙しそうだから、俺もちょっと手伝うよ。」


 そしてユリ達のヘルプに入りながら、チラリと横のミクモのお店の方を見てみると……ミクモの他にもう一人、忙しそうに接客をしている顔見知りの人物がいた。


「な、何故我がミクモ殿を手伝わなければならんのだ!?」


「当たり前じゃ!!子供の時から妾に育ててもらった恩義……今ここで返すのじゃ!!」


「むぐぐ、それを言われると何も言い返せぬ。」


 驚くべきことに、ミクモの手伝いをしていたのは、この国の現国王であるシンだったのだ。


「ミクモ、そっちのお店も大繁盛してるみたいだな。」


「おぉ!!おぬしも来ておったのか、おかげさまで妾の店も大忙しじゃ!!豆腐が飛ぶように売れるのじゃ〜。」


 どうやら、ミクモのおかげで豆腐という食材もだいぶこの国に広まったらしい。


「それは良かったよ。それで、本命の油揚げの試作は上手くいってるか?」


「むっふっふ、だいぶ形にはできたのじゃ。後は至極の美味さを目指すのみ。」


 油揚げを想像しているミクモは、表情がニヤけて今にもよだれを垂らしそうになっていた。


「っと、いかんいかん。今は豆腐を売ることに集中せねばな。ほれ、シン坊次は滑らか豆腐3つじゃ!!」


 すぐに営業モードに切り替わったミクモは、お客さんから注文を聞いて、それをシンに伝えて用意させている。

 シンのことをこんな風に顎で使えるのは、この世界で彼女一人だけだろうな。


 そして、お菓子の在庫もなくなって営業を終えると、ユリがカリンからある伝言を預かっている……と俺の元へやって来た。


「社長、実は母上から伝言を預かっている。」


「カリンから?」


「あぁ、今日……夜が更けてきたら、屋敷に来いと母上が言っていた。」


「夜更けに?」


 わざわざそんな時間を提示するということは、何か重要な話があるのかな。


「わかった、じゃあそのぐらいの時間に訪問するってカリンに伝えておいてくれ。」


「承知した。」


 一体どんな話をされるのだろうか……と少しドキドキしながら、片付けを手伝った後、俺はエルフの国へと戻るのだった。

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