オークを食べるために
新居の紹介を終えて、みんなは一度エルフの国へと戻っていった。その後、俺は獣人族の国を訪れた。
「ランの話だと、オークは汗とか体臭とかそういうのに魔物を発情させる成分が含まれているらしい。」
血液とか、肉そのものとか……そういう部分には特にそのような成分は含まれていないという話だ。
「だから食べても大丈夫ってランは言ってたけど……いまいち不安が拭えないなぁ。」
またあんな事になったら大変だからな。ここは少し慎重になろう。
そんな不安を抱えながら歩いていると、あっという間にジルの経営する、魔物肉専門店の目の前にたどり着いてしまった。
「ふぅ……良し行こう。」
一つ大きく息を吐いてから、俺は扉に手をかけて中に入った。すると、奥からジルがこちらへ歩いてきた。
「いらっしゃいませヒイラギ様。」
「やぁジル。」
「本日は何かをお探しに?」
「いや、また魔物の解体をお願いしたくてな。」
「なるほどなるほど、お任せください。向こうのお部屋で詳しくお聞きしましょう。」
そして俺はジルに来客用の部屋に通された。そこでお茶とお菓子を嗜みながら、今回お願いしたい魔物のことについて話す。
「今回お願いしたいのは、オークなんだ。」
「オークでございますか。あれの肉は美味でございますぞ。」
「あぁ、美味しいって噂を聞いたから倒したんだけど……一つあんまり嬉しくない事も知っちゃってな。」
「嬉しくないことと申しますと?」
「実は俺の仲間には魔物もいるんだ。」
そう告げると、ジルはそれだけで察してくれたらしい。
「オークの体臭の特性……他の魔物への発情促進効果でございますね。」
「そう、それだ。もし食べるってなった時にそれが怖いんだ。」
「ほっほっほ、ご安心ください。あれはオークの汗腺から分泌される臭いと体液にしか含まれていないものですから。汗腺を綺麗に取り除けば、何も問題はございませんよ。」
「それを聞いてやっと安心できたよ。」
長年魔物を肉として扱っているジルの言葉は、本当に信用できるし、安心できる。
「普通の解体師でもオークの解体はできますが、念の為今回もグリズ達にお願いしておきます。彼らなら、ヒイラギ様の心配を払拭するほど、完璧に解体してくれるでしょうから。」
「助かるよ。」
そしてジルはグリズ達に手紙を書いて、鳥を飛ばした。すると間もなくグリズ達がここにやってきて、オークの解体を始めてくれた。
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