エートリヒからの報酬


「お待たせしました、こちらですね。」


 二階から降りてきたミースは、黒色小さな箱を携えていた。


「中身を見てもいいか?」


「もちろんです。コレ、鍵です。」


 彼女から小さな鍵を受け取って、黒い箱の鍵穴に挿し込んだ。そして軽く回すと、カチ……と音を立てて黒い箱の蓋が少し浮く。


「開いたな。」


 いざ黒い箱を開けて中身を見てみると、そこにはまた大小さまざまな鍵がたくさん入っていた。


「おぉ、思ってたよりも多いな。」


「当然ですよ〜、あんなに大きいんですから。鍵もいっぱい必要です。」


「まだ俺は実物を見てないから、どんな感じか分からないんだが……ミースから見てもかなり大きいか?」


「大きいなんてもんじゃないですよ!!なにせ、この街で一番大きな建物なんですから。」


「そいつは楽しみだ。ありがとなミース、また今度ゆっくり来るよ。」


 鍵をマジックバッグの中へと入れ、ミースへとお礼を告げてからギルドを後にした。そして一直線にある場所へと向かっていると、道中でグレイスが質問を投げかけてきた。


「ヒイラギさん、これからどこに行くっすか?」


「もう着いたぞ。」


「え!?」


 エミルの街を全て見下ろせる位置にある、巨大な屋敷……その門の前に俺はたどり着いた。


「まさかこんなに大きな屋敷を用意してくれるとはな。」


 巨大な門の中心にぽっかり空いた鍵穴へ、もらった鍵の中で一番大きな鍵を挿し込んだ。すると、ガチン……と重厚な音が響き、ゆっくりと門が開いていく。


「あ、開いちゃったっす〜。」


「さ、中にはいるぞグレイス。」


「い、いいんすか?こんな所勝手に入っちゃって……。」


「普通はダメだが、もうここはだからな。」


「えぇ!?これからここに住むっすか!?」


「ま、そうなるかな。」


 驚きながら辺りを飛び回るグレイスと共に、広い中庭を進む。


「実はこの屋敷って、何十年と人が住んでなかったらしいんだ。」


「廃墟だったってことっす?」


「まぁ、一応ある程度の管理はされてたみたいだけどな。今回俺達がここを譲り受けるってなったから、大急ぎで補修とか、整備の手が入ったらしいな。」


 突然決まった事だから、まだ広い中庭には花とかそういう飾り気のあるものは無い。最低限、雑草は抜いてあったり、花壇が整備されてあったりと、そんな感じだ。

 後は俺達が好きなようにいじっていけば良い。


 そして屋敷の玄関口へとたどり着き、大きな扉を見上げていると……。


「中には入らないっすか?」


「中に入る時は、明日みんな一緒に……って決めてるんだ。今日は軽く下見に来ただけさ。」


 きっとみんないい反応をしてくれると思う。明日が楽しみだな。


「さ、グレイスそろそろ帰ろう。お腹すいただろ?」


「ペコペコっす!!」


 楽しみを明日に残して、俺はグレイスとともにみんなの元へと帰るのだった。

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