黒い血液
赤い熊の腕を受け止めると同時に逆方向へと力を加え、腕をへし折る。それでも尚噛みつこうとしてくるこの熊はやはり異常さを感じざるを得ない。
噛みつこうと突き出してきた首を屈んで避けると、右手にサンダーブレスを纏わせ、抜き手で心臓めがけて貫いた。すると、糸が切れたように赤い熊の力が抜けていく。
「これで良し。」
熊の体から手を引き抜くと、驚くことに真っ黒な血がドバドバと溢れ出してくる。
「血が黒い?」
「そういえば腕を切り落とした時、血が出ていなかったな。」
シンは切り落とした熊の腕を拾い上げて、断面を確認してみるが、やはり血は一滴も流れていなかった。
「なにか生物としておかしくなってしまっているような感じがするぞ。」
「そうだな。」
「この魔物のことはいろいろ調べてみる必要がある。死体は国の魔物の研究機関に送ろう。」
シンが合図をすると、ジンバにいた兵士が魔物の死体を運んでいく。
「だが、一匹ではわかることが少ないだろう。後何匹か同じような魔物の死体が欲しいところだな。」
「確かに。」
サンプルは多ければ多いほうが良い。その分、分かることが多いからな。
「となれば、後何匹かあれと同じような魔物を狩るか?」
「うむ、そうしよう。」
するとシンは、クンクンと鼻を鳴らし始めた。
「そんなに匂いを嗅いで何してるんだ?」
「今の魔物の黒い血は、嗅いだことのない独特な匂いがしたのだ。これと同じ匂いを辿れば、同じような魔物に辿り着けるのではないかと思ってな。」
シンの嗅覚は警察犬並み……いや、下手したらそれ以上かもしれない。肉の匂いを嗅いだだけで、どの動物の肉か判別できるし、かなり信用できる。
「微かだが、これとはまた違う獣臭に混ざってこの血と同じ匂いがする。」
「どこからそれは匂ってくるんだ?」
「こっちだ、ヒイラギ。」
シンの後に続いて、森の奥深くへと突き進んでいくと、俺でもわかるぐらい濃い血の匂いと、腐臭が漂ってきた。
「う、この臭い……。」
「腐っておるな。」
俺よりも鼻が良いシンにはこの臭いはかなりきついだろう。そんな腐臭の中を突き進むと、夥しい魔物の死体の中心で、腐った肉を貪り食っている魔物がいた。そいつは俺達に気が付くと、すぐに食事をやめて襲い掛かってきた。
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