ミルタ商会獣人国支店
「これはこれは、ヒイラギさん。ようこそいらっしゃいました。」
「こんにちはミルタさん。」
「こんにちは〜!!」
「ささ、どうぞこちらへ。」
ミルタさんに案内されて、客人用の部屋へと案内される。すると間もなく、温かい紅茶が運ばれてきた。それを一口飲んだ後、俺はミルタさんに話しかけた。
「こっちでの商いも順調みたいですね。」
「おかげさまで、色々な獣人の方々と繋がることができまして……やっと軌道に乗れました。」
「それはよかった。ここの従業員には獣人を?」
「えぇ、こちらは獣人国支店ですから、せっかくなら従業員も獣人の方々を採用しようも思いましてな。今は5人の獣人に働いてもらっています。」
獣人の国だから、従業員には獣人をという考えはとても良いことだと思う。訪れる客も獣人が大半だろうし、何よりここで働く獣人を見て、人間といっしょに働きたいと思う人もきっと現れるだろうからな。
「いやはや、それにしても聞きましたぞヒイラギさん。」
「何をです?」
「ヒイラギさんは、この国を危機から救った勇者ということをです。」
「あ……。」
そう言えば、あの時ははぐらかしたんだよな。獣人と仲良くなったら聞いてみて……と。
「それを聞いてやっと納得しました。ヒイラギさんが何故こんなにも獣人の方々に名前と顔が知れ渡っているのか。」
「あ、あはは、そんなに大したことじゃ……。」
謙遜していると、隣に座っていたフレイにぎゅっと手を握られた。
「大したことだよ!!だってあの時ヒイラギさんは、ボクとお姉様も助けてくれたんだから!!」
「フレイ……。」
「だからもっとヒイラギさんは胸を張るべきなの〜!!」
そしてフレイにブンブンと握られた手を振り回されてしまう。
「わ、わかったわかった。落ち着いてくれ。」
フレイの頭を撫でると、やっと彼女は落ち着きを取り戻した。
「ご、ごめんね。ちょっと熱くなっちゃった。」
「大丈夫。今回は俺が悪かった。」
紅茶を飲んで、しゅん……と縮こまるフレイの頭を撫でながら、俺はミルタさんへ本題を切り出した。
「さて、それじゃそろそろ……。」
「そうですな。積もる話はまたゆっくりと別の場所で。今は商談を致しましょう。」
そして、新作のお菓子を開発するための商談が始まるのだった。
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